HERE, NOT SOMEWHERE...Hiroyuki Morikawa

 

 

絵描きの植田さん - 2006年01月29日(日)

なんだか今日の公園はにぎやかだなぁ、なんて思ったら、
そういえば、今日は日曜日だったのでした。
今週から長い長い春休みの始まりです。
さてさて、どうやって過ごそうか。
とりあえず、朝方の生活リズムの習慣をつけたいものです。

公園のベンチでは、ビル・フリーゼルの音楽を聴いていました。
音量をひかえめにして、子供たちが、はしゃぐ音もいっしょに楽しみます。
僕の耳には、それらが絶妙なバランスで溶け合います。
あー、なんて素敵な音楽。


そして、のんびり、本を読みました。
いしいしんじ=作 植田真=絵 「絵描きの植田さん」。

主人公である、絵描きの植田さんは、ストーブの火事で、
大切な人と聴力を失う。傷ついたこころと聴力。
画材一式とわずかな着替えをもって、都会から湖畔の一軒家に引っ越します。
そこでの暮らしで、さまざまな出来事に遭遇して、
植田さんはこころを取り戻していくのですが、
特に、メリという10歳くらいの女の子とのやりとりが素敵です。
このメリというめずらしい名前は、
メリの両親に頼まれた外国人の祖母が、役所の戸籍課をたずねた時に、
出生届に「マリ」と書くべきところを興奮のあまり、
うっかり「メリ」と書いてしまったというエピソード付きなのですが、
いしいしんじさんのお話でよく登場する、
そんな細やかだけどぬくもりが生まれる演出が、僕は大好きです。

そして、画家・植田真さんの絵が、
なかなか登場してこなくて不思議に思うのですが、
物語の終り近くに、こころを取り戻した主人公が描いた絵という仕掛けで、
画家・植田真さんの彩色画が添えられるのです。
この仕掛けが本当に素晴らしくて、愛おしい。
いつまでも僕の本棚に置いておきたい大切な本になりました。


<四季ごとに山の風景は色を塗り替えるように変化する。いっぽうその深い土台は、何十年、百年経っても変わらない。なかなか山のようにはなれないわ、とおかみさんはひとりごちた。 でもせめて、季節ごとに変わる風景をたのしみ、その彩りに胸おどらせることだけは、忘れずにおきましょう。>

<ねぇ、みんな!いままで知ってた?考えたことがあった?
 ほとんど自慢げに胸をそらせ、輝くような声でメリはいった。
 私たち、こんなすばらしい世界に住んでいるのよ!>




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