「虫」の心の声を聴いた。
それはとてもか細く弱々しくて、私の胸に突き刺さった。
あの日、翼をなくした私に
「僕が代わりにあなたの翼になりましょう」
と、「虫」は空へと飛び出した。
だけど「虫」の翼は小さくて、草原を飛ぶのがやっとだった。
空高く飛べない「虫」は自分の体を呪い悔しがり、私は何もできずただ、「虫」の行方を見守っていた。
いつしか「虫」は心を閉ざし、誰も彼の苦悩を知ろうともしなかった。
強がりが誤解を生み「虫」は孤立した。
私はすべてを知っていたけど、知らないフリをした。
なぜならば、「虫」が強くなるために。 彼が自力で歩けるように。
その結果、待たせるばかりになり、待ちきれない「虫」は自由を求め、でも、時間の経過とすれ違いに「虫」は悲鳴をあげ、高い空を諦めた。
誰も「虫」を責められない。
だって、「虫」は寂しかったのだ。
私を喜ばせる為に「虫」は時間と人生を費やした。
私と同じ翼じゃなきゃ、あの空へはいけない。
私と同じ翼を持つ者だけがあの空へ行けるのだ。
すべてを悟った「虫」は決意した。
「僕はあなたの翼にはなれなかった。 だけど、いつか僕もあの空へ行くから」
そうね、待ってるわ、あなたも此処にくるのを。
私は「虫」より長く生きられない。
共に命を燃やすのは「虫」じゃなかっただけ。
私の命は「私の細胞たち」と共にある。
新しい翼を見つけた「虫」が、どうか高く飛べますように。
「私の細胞たち」がどうか長く燃え続けますように。
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