ムカデがあらわれた。 朝、けむが言う。「ムカデがいた。」 夢だろうと言ったが、親指くらいの全長のムカデが 夜中に手を這っていたと言うのだ。 そしてピンと手ではねたら、どっかいったと。 ムカデというと、這うとミミズ腫れができるイメージが あったのだが、けむの手はきれいそのもの。 夢だろうとまた思い、それほど重要に思っていなかった。 なにしろ、ここは二階。蚊すら現れないんだから。 昼は、朝そんなことがあったことも忘れ過ごしていた。 夜になって、けむが言った。「ムカデいた?」 あ、、、、忘れてた。 ムカデの存在なんか無視して生活してたよ。 「ふとん干さなかったんだ。」 けむとしてはムカデ成敗に乗り出してくれていると思っていたらしい。 ムカデ自体忘れていた私は天気の悪い日にそんなこともするはずもなく のうのうとしていたのだ。 そして、ムカデ捜索がはじまった。 もう半日経つのに、この部屋にはもういないかもしれない。 ムカデ本人を見てもいない私はびくびくしながら、 布団を一枚一枚はがしていった。 ここでもないここでもないとはがし 最後の一枚が残り、もういないだろと思い はがしたところ、黒いへにょっとした糸のようなものがあらわれた。 思いのほか、小さかった。 たしかに親指ほどの長さだが、細かった。 そこは私と夢音が昼寝していた布団の真下だった。 踏んで寝てたのね…。 生きてるとか生きてないとか言いながら、 けむがつまんで外に投げた。 なんてことない事件だったけど、こう清潔(?)なところに いるとちょっといるムシが怖く感じるもので、 観察すらできなかった自分に自己嫌悪。 同定くらいする意気込みでいなければ。 ちなみに私がちいさいころ祖母の家でみたムカデは体長10センチは あろうかという大物だった。 全体的に太く、こんなのに這われたら・・・と怯えたものだった。 祖母はそのムカデを箸でつまみあげ、フライパン(使わなくなったやつ)で いためていた。(成敗のため。食べるためではない。) ふと思い出したが、祖母は強かった。
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