f_の日記
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僧は山上の岩場から
ただ世界を見渡していた

虹色に彩られた世界の
ひとつぶひとつぶの光の粒子を慈しみながら

世界は美しい
美しさの中で
絶える事なき悲鳴を上げている

だから恍惚に身を任せるでもなく
歓喜に我を忘れるでもなく

同時に訪れる喜びと悲しみと
同時に存在する無為とカタチとを
肉と心の目で同時になぞりながら

大日如来も梵天もヤハウェにも
蔵し蔵さぬこの世界の抗いのなかで

僧はただ
立ちすくんでいた

2004年11月01日(月)
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