先日、病院の耳鼻咽喉科の待合室にいた時のこと。
少し前から、診察室のほうから幼子の泣き声がしていた。 泣き声からしたら、一歳くらいの男の子だろうか。
その泣き声がずーっと泣き止まない。 そのうち、さらに声もエスカレートして、待合室でただじっと座っている大人たちの神経に触るくらいになってきた。
次第に、その子の腹筋はち切れんばかりのぎゃん泣きを聞いていたら、こちらも何となく落ち着かなくなってきた。
もしかしたら、幼児が耐え切れないくらいの手荒い治療でもされているのだろうか。よっぽど苦しいのだろうか。。。かわいそうに。
そんなことを慮っていた矢先、ベテラン風の看護師さんが、その男の子を、中型犬を運ぶかのように胸の前にぶら下げて、診察室から出てきた。
その子が力いっぱい、 「ママ〜!!!」と叫ぶやいなや、診察室前にいたその子の母親に自ら飛び移るかのように抱きかかえられた。
するとすぐに今までの泣き叫び声は急に落ち着いて、母親の首にしがみつくように全体重を預けて呼吸を整え始めた。
そっか。人見知りの月齢で、母親から引き離されて、怒って泣いていたのか。確かに鼻の穴か喉に何かを入れられたのかもしれないし、処置は不快だったかもしれないけど、痛みを伴うほどではないはずだ。
その様子なら、ママに抱っこされてよっぽど安心したのだろう。 よかった、よかった……。
ってなことを、そこに居合わせた患者さんのほとんどが思っていたらしく、その母子に釘付けで、待合室の廊下を去っていく後姿に、全員の視線が釘付けになっていた。
それぞれ自分の子供が幼なかった時代を、誰もが思い出してるってな感じの視線の送り方であった。私も懐かしさのあまりほろりと瞼に涙を浮かべてしまったよ。
|