■民法第570条 売買ノ目的物ニ隠レタル瑕疵アリタルトキハ第五百六十六条ノ規定ヲ準用ス但強制競売ノ場合ハ此限ニ在ラス
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一 【意義】
法570条の趣旨は、買主保護にある。すなわち、特定物売買における売主は、その特定物を給付する債務を負い、それを給付すれば履行は完了するので、例えその物に原始的瑕疵があっても、買主は履行責任を追及することはできないのが原則なのだが、しかし、これでは買主にあまりにも酷なので、売買の有償性を考慮し、買主の信頼保護のために特に本条が法定されている。
二 【要件】
本条が成立する要件としては、次のものがある。
要件1-物に隠れた瑕疵があること
①「目的物ノ瑕疵」とは、その種のものとして通常有すべき品質・性能または当事者が表示した品質・性能を欠くことをいう(瑕疵は物質的な瑕疵ばかりでなく、法律的な瑕疵も含む-判例。)。 ②「隠レタル瑕疵」とは、取引上通常要求される注意をしても発見できない瑕疵をいう。買主が、瑕疵の存在を知っているか、または、通常の注意を払えばこれを知りえた場合には、売主の担保責任は生じない。
要件2-瑕疵は契約締結時に存在すること
・後発的瑕疵の場合は、売主の責に帰すべき事由に基づくか否かによって債務不履行または危険負担の問題を生ずるにすぎない(契約責任説からは、瑕疵は契約時に存在する必要はなく、履行時までに生じた瑕疵についても本条の責任を問う余地が生じうる。)。
要件3-特定物売買であること
①不特定物売買には適用されず、その場合にはすべて債務不履行責任(不完全履行)を問いうるだけである(法定責任説;⇔契約責任説によれば、不特定物売買にも本条が適用される。)。 ②判例は、不特定物売買において、買主が瑕疵の存在を認識したうえでこれを履行として認容し、瑕疵担保責任を問うなどの事情が存しない限り、受領後もなお完全な給付を請求しうる(最判昭和三六・一二・一五)として、本条の不特定物売買への適用可能性を示唆している。
三 【売主の無過失責任】
瑕疵担保責任は売主の債務不履行の効果ではなく、法律が買主の信頼保護の見地より特に売主に課した法定責任であるので、本条の責任を追及するのに、売主に過失あることは要せず、無過失責任となる(本条を債務不履行の特則とみる契約責任説では、過失を要することになる。)。
四 【瑕疵担保責任と錯誤】・・・デカイ論点(!)につき、省略。
判例は、契約の要素に錯誤があって無効な場合には、本条は適用されないとするが、学説の多くは、本条が優先適用されるとする。
五 【効果】
566条が準用される。
①善意無過失の買主は、契約目的を達しえないとき、契約を解除できる(催告不要)。 ②善意無過失の買主は、損害賠償を請求できる。その範囲につき、法定責任説の多くは、契約を有効と信頼したことにより被った損害=信頼利益の賠償を請求しうるにすぎないとする(契約責任説では、履行利益の賠償を請求しうるとされている。)。 ③損害賠償請求権は、買主が事実を知ったときから一年の除斥期間内に行使しなければならない。 ④代金減額請求権はない。
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Aシマのおかげで契約法なんぞを復習させてもらったわ。'89年版の『択一式受験六法 民法編 (自由国民社)』を参考に。
はっきりいうけど、そちらのワガママだよ。
 
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