窓のそと(Diary by 久野那美)
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公演まであと1か月。
だけど。
ぜんぶ、いちからやり直すかもしれない。 いや、やり直すことになる。
今日の稽古はこれまでにもまして、破壊的な稽古だった。 これまでつみあげてきたものが全部木っ端みじんになる稽古だった。 稽古するたび、確実だったものが壊れていくということをここ数回繰り返しているんだけど、それにしても今日のはすごい。
えええええええっ?そういうのってありなん?
誰も思いつかなかった方向へ、お芝居が向かっていた。 最初のシーンから稽古始めたのだけど、唖然として見ていたら最後までいってしまった。終わって、ふたりとも、 「・・・・・・・・・・・」 となった。
「・・・・・・誰なん?そのひと?」 と役者に聞いてしまった。
舞台の上に、きのうまでいなかったひとがいた。 きのうまで稽古してたことが何も身についてないひとがいた。
でも、そういう「ひと」だった。衝撃だった。 そういうひとも、いるかもしれないじゃないか。 と思った。私の知らないひとだったのに。
知らない人が現れた代わりに、舞台の上には、役者も台詞もなくなっていた。そのひとが話していた。 チャーミングだなひとだった。 このひとにもう一度会いたいと思った。
しかし。
それは可能なのか?
いったい何をしたのか?と役者に尋ねても、 はっきりしたことはわからなかった。 でも、彼女はなんとなく、何かを知っている気がした。 でも、公演までにそれを確認することは可能なのか?
誰にもわからない。
もうちょっとで完成するところだったのに・・・・。 あれを、どうすればいいの?
でも。魅力的なひとだったのだ。 あのひとにもう一度会いたい。 と私たちはふたりともきっと思っている。
そして公演まであと1か月ある。
あ〜あ。どうしよう。
こういうのは、きっと、とっても贅沢な悩みなんだろうと思う。
楽しいし。
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