きみはボクらの宝物
小悪魔研究所



 最近の一人前風味

本日の担当:SHY

 最近Sizはまた階段を登りつつあって、気がつくと新しい段に足をかけている。


 「パパが死んじゃったとき、お棺の中になに入れてほしい?」
 ずいぶんな質問だなと思いながら、私は大切なものの中からいくつか彼女に提示して見せた。
 だが、それだけでは不満だった様子。
 「ケータイもいるよね?」
 ...いや、持って行っても使えないんだな、それは。
 丁重に断るとSizは嬉しそうに笑った。
 「じゃあ、私がもらうからね」



 ツール・ド・フランスが始まっている。
 自転車好きの我が家にとって、7月はそれを中心に回るといっても過言ではない。
 レースの駆け引きやルールについてはわからなくても、大変な局面や勝ち負けについてはSizは十分理解している。
 「転んで痛そうだねー」
 「あのチームの服、パパも持ってるねー」
 いつの日かアタックのタイミングや、集団内の秩序について語り合う日が来るのだろうか。
 表彰式のシーンを見ていたSizが不意に言った。
 「あ、ライオンさんだ」
 ツール・ド・フランスのステージ優勝者には、メインスポンサーのクレディ・リヨネからライオンのぬいぐるみが贈られる。その色はマイヨ・ジョーヌのそれだ。
 「あのライオンさん、欲しいんだけど?」
 いや、そのためにはツール・ド・フランスに出て、しかもステージ優勝しなくちゃいけないからねぇ、と私は笑いながらSizの顔を見た。

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 銀吟とてんちょ〜と私の3人は、7/9のご来光を富士山頂で拝む予定だ。
 事前の準備を傍で見ていたせいもあって、Sizもだいたいの事情は理解している。
 「パパ、富士山がんばってね」
 励ましの言葉はとてもありがたい。
 だが、そのあとに続くのが「落ちたら死んじゃう」とか「迷ったら私が案内してあげる」とか不吉なことばかりなのはどうしてだろう。
 そして最後の言葉。
 「ちゃんと登ったら、電話してよね」
 例によって母親か妻のような言い草。
 だが、私はあえて反論したい。
 7:30にならないと絶対に起きないくせに、と。
 ちなみに7/9の日の出時刻は4:37。
 標高が高い分、さらに早い。
 Sizは縦横無尽に布団の上を転げ回っている頃だろう。

2005年07月08日(金)
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