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■ 楽器
バイオリンをケースにしまう母を見ながら、楽器のケースって素敵だなと思う。 ケースを開けると、そこはベージュのびろうどが張られている。やわらかなそこの、入れるべき場所に弓をしまい、本体は指板の部分を革の紐で軽くとめられ、おふとんみたいな布をかぶせてバイオリンを覆ってしまう。 静かに蓋を閉めて、箱の中にしまわれる。
なんだか楽器は、お姫さまみたいだ。
しまう前にも、やわらかい布できれいに汚れを落とされて拭かれて、張っていた弓をゆるめてもらう。
楽器も、素敵だなと思う。
楽器は、みんなそれぞれのマスターに愛されて、それぞれの愛のもとに扱われて、マスターと一緒に音楽を謳う。 愛なく放置されればどこか壊れたり、精彩を欠いた音になったり、ぼろぼろになったりする。 けれどいい子で、ちゃんと楽器として生かしてもらえれば、それこそ何百年だって長生きする子もいる。
楽器を手に入れるときだって、マスターはきっと「これだ」って惚れ込んで手に入れたりする。
音が好きとか音楽が好きとか、言葉ではうまく説明できない根源的な感性の問題だ。 でもだからこそ、その「好き」という気持ちにまじりっけがなく、純粋だ。 そしてその純粋なものは、とても大切なものだ。 その「好き」があるから、聴く人の魂を強く揺さぶることができるんだ。
そんなうつくしい何かが、大好きだ。
2010年10月09日(土)
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