das Herz ...shottan

 

 

80歳乙女 - 2003年12月02日(火)

時間がなくてもお話はしたいの

ふと思い出したのよ

前にね いわゆる末期な患者さんがいてね
抗癌剤とか放射線治療とかしてるんだけど

それも気休めみたいな状態でね
癌が脳に転移してて会話もいまいちだったりするのよ

でもあるときに

「今さっきくしゃみしなかった?」

と言われました


「いーえ」
と 答えるわよね してないもん

で彼女(っつっても80歳位)がね
「今、もう一人の人とあなたのことを誉めてたの」

そういうのものすごく嬉しいの
もうモーレツに嬉しいのよ

で ありがとうございますと言うわよね

そして彼女は続けたの

「あなたならきっといい彼が現れるわよ」

なぜ私に彼がいないと決め付ける?
いなかったんだけどね
そういうオーラも出てるんだろうけどね

私は彼女に
「素敵な人と出会えましたか?」
って聞いたのね

「私だって4・5回くらい初恋してるわよ」
って言われました

そのうちの3・4回は確実に初恋じゃないよ
って突っ込みたくても突っ込めないの 仕事だし

でも自分で「初恋じゃないわよね、うふふ」
とか突っ込んじゃって かわいいの

女はいくつになっても恋の話をする時はかわいい顔をする
と思いたいし そうなりたいわ

そのとき80歳は乙女の顔だったのよ

どんな初恋だったのを教えてもらいました


80歳乙女は当時20歳
二人っきりで会った事なんてないけど
子供の頃からお互いを知っている
そんな近所のお兄さんに恋をしていた
生活の中で交わす挨拶程度の会話にときめく毎日だった
彼女はそれで十分だと思っていた

でも思いが募れば募るほど
恋しくて悲しくて切なくて
手紙を書いてはみるものの 渡せない日が続く
恋に病んだ彼女は一歩も家から出なくなって
何日も一人で泣き続けた

そんな娘を心配した彼女の母が
彼のところに訪ねていって
彼女の状態を説明したところ

彼がこう言ったらしいの
ずっと彼女の事を好いていた
そして今どうしても 一目でいいから彼女に会いたい 

それを聞いて彼女の母は安心して
娘に会いに来てくれと頼んだらしい

ある日彼は彼女を訪ね
そして彼女は愛しい人と初めて二人の時間を過ごした
(このへんの意味は分かってください)

数日後 彼と2回目の対面をします 
彼女と彼女の母と そして彼と
3人で会うことになって
実は私が彼にあなたの気持ちを伝えに言ったのよと
彼女は母に聞かされるのです
乙女そんなことされたら恥ずかしいじゃない
やんだ!おっかぁったらもう! だったらしです
東京の人なんですけどね

その時に彼女は 渡せずじまいだった手紙を彼に渡し
彼女の母は何かを渡した

母が何を渡したのかは彼女は知らなかった
聞いても教えてくれなかった

これから楽しい毎日が続くと思っていた乙女
でもその後 彼からは音沙汰もなくなって
彼の家もなくなってしまい

乙女は初めての失恋を体験したのです


そして乙女は女になって
いくつかの恋をして 結婚して 子供を産んで

年齢を重ね 病を患い
そんな恋を思い出す日も少なくなっていた頃

病院に初恋の彼がお見舞いに来て
数十年ぶりの再会の挨拶に こう添えた

「君のお母さんからもらったお守りと
 君の手紙を持っていったおかげで生きて帰ってこられた」

彼は戦争に行かなければならなくなって
それで彼女に一目でもと思ったらしい

その時はじめて
母が彼に渡した「何か」がお守りだったと知るのです
彼女の母がお守りを渡したと言わなかったのは
彼が戦争に行くのを勘付かせないためだったのだろうと
80歳乙女は言ってました

よくある戦争話なのかもしれないけど
素敵なお話だったんです

80歳乙女はとても素敵な顔で聞かせてくれました
事実かどうかも判断できない状態なんだけどもね
いや それはまたおいといて

彼女のお母さんはどんな気持ちだったんだろう
娘と相思相愛の男性が戦争に行かなければいけない
どんな思いで彼女に彼を会わせたのだろうかと

彼女も突然の恋人の失踪?に
どんな思いだったんだろうと

そんで再会して全てを知ったときにどう思ったんだろうと
その辺はあんまり突っ込まない方がいいのかと思って
あえて聞きませんでした
思い出なので
その思い出は80歳乙女だけのものなので

はぁーーー
あれは確かに乙女の顔だったのよ

80歳乙女から
「初めてチョメチョメしたのよ」
って言われたときは 
私の方が顔から火が汗が油が出るくらい恥ずかしかったです

チョメチョメ・・・・・・・・
はぁーーーーーーーーーーーー









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