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| 2010年10月10日(日) たまには真面目に闘争を(12) |
| 偉い人が苦い顔をして重い口を開く。 「確かに鍵一本紛失では不相応の高額請求であると認めざるをえません。紛失した鍵によって万が一部外者がマンション内に入ってくる可能性はゼロとはいえませんが、今回は自室のシリンダーの交換だけで結構です」 言葉に僅かな抵抗を感じたが何の対策も講じずただ遺憾の意を表すどこかの国の奉行よりも遥かに建設的である。 私は「ありがとうございます」と、素の”気が良い私”が出てこないよう必死に抑えながら無表情で会話のメモを続ける。そして彼は続けた。ただし。 「ただし、今回の件は少なからず居住者を不安にさせたことも事実です。全戸の鍵交換代金は請求しませんが、今回の会議の議事録にヨシミさんが鍵紛失に関して謝罪したことを記してもいいですか」 見栄、メンツ、外聞、面目、体裁。大人になるにしたがって必要な言葉が泉のように沸きあがる。居住者に謝罪? それは違う。この謝罪はこの役員達が自尊心を守るために要求しているのであって、私はもう家に帰ってお風呂に入りたい。 「もちろん謝罪の文面は載せていただいても結構ですし、載せるべきだとも思います。よって議事録にはこの謝罪に至った経緯。簡単に申しますとまず管理組合が50万請求して、消費者センターと都宅地建物取引業協会の意見を元に私が不正請求だと異議を立て、結果今回の臨時の会議を開催し、50万請求は個人への高額請求だったと認めたうえで、最後に私が謝罪した。この一連の流れを必ず議事録に掲載して下さい」 「ぐぅ……」 私は生まれて始めて生で「ぐうの音」を聞いた。 |
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