2011年03月07日(月)  背徳エメロン。
 
同年代のナース二人と喫煙所でシャンプーの話をしていたところ、私の紙がボサボサなので短く切るかもしくは毎日リンスをしろという二者択一を迫られ、一人のナースが「私も小さい頃頭がボサボサだったから毎晩お母さんにリンスが入った洗面器に頭押さえつけられてたわよ」と言った刹那、三人が一様に「!?」という表情を浮かべた。
 
「……そういえば、リンスって洗面器のお湯に薄めて使ってたよね」
「使ってた使ってた!」
「あれっていつからなくなった?」
 
リンスは洗面器のお湯に薄めて使うもの。三人は煙草を手に持ったまま記憶を辿るようにそれぞれの過去へ旅立っていった。私は小さい頃はずっと坊主頭だったが、母の目を盗んでは洗面器のお湯に薄めたリンスを頭に撫で付けていた。坊主頭にリンスを塗ると、女性の衣類をまとったような背徳感に包まれ、何だかモヤモヤした気分になっていた頃が、あの感覚が鮮明に甦ってきた。
 
「……いつからしなくなったかなあ」
 
一人のナースの独り言で私達は職場の喫煙所に戻ってきた。「ヨシミさんどうしたの?」
 
意味もなく顔が赤らんでいた。
 

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