にっき日和
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定時のチャイムが鳴り、
現場のTさんが挨拶にきました。
彼女は、今日を限りに退職するのです。
超個性的なTさんは、社内のあちこちで敵を作っていました。
わたしも、そんな彼女に辟易することが多々ありましたが、
決して嫌いではありませんでした。
そして彼女も、比較的わたしには、
好意的に接してくれたように思います。
「これからもがんばってね」
「元気でね・・・・・」
これまでに、いくつもの職場を渡り歩き、
数え切れないほどの別れを経験しているわたしですが、
今日のサヨナラは、格別苦いものがあったのです。
彼女の退社は、2週間前の会議で決定しました。
そう・・・・リストラなんです。
正社員で、しかも10年選手の彼女に白羽の矢が刺さるとは、
まったく意外な展開でした。
数名のパート社員のうちから絞られると、
誰もが予想していましたから。
わたしは会議の末席で、事の成り行きを見守っていました。
普段の就業態度、生産効率など、
それなりの理由付けはありましたが、
けっきょく彼女の場合、
”協調性”が決め手だったように思えました。
協調性・・・・つまり言い換えれば、
”気に食わない人”ってことです。
しょせん個人の資質の差異なんて、微々たるものなんでしょう。
この災難が、自分の身に降り掛かってくることがないよう、
ただただ、祈るのみです。
Tさんの件は、会議に出席した一部の人間しか知りません。
社内の人たちには、今日まで秘密にして欲しいという、
彼女の希望だったのです。
十数年勤めた職場だったのに、
彼女はひっそりと、誰にも告げずに退職していったのです。
職場を追われたTさんの気持ち、
わたしには痛いほどわかります。
不景気が続く昨今、
リストラなんて珍しいものではなくなりましたが、
それはそれは、口惜しくて辛いものなんです。
きっと、経験した者でないとわからない痛みだと思います。
うちの会社に限ったことではないのですが、
いまどきの企業は、たいした努力もせずに、
リストラという安易な手段を選んでいるように思えます。
リストラ・・・・って、なんてずるい言葉なんでしょう。
あえて”首切り”という、残酷な表現を避け、
横文字でオブラードし、
いかにも効率の良い手段にみせかけているのです。
リストラするもの、されるもの。
今回のわたしは、”する側”に回ってしまいました。
末席とはいえ、会議出席者のひとりでしたから。
まじめに働いているものが、安心して生活できる・・・・
そんな世の中になることを希望します。
ぴょん
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