お気に入りの自動車を前にご機嫌だった私は、突然の明の来訪に苦笑しつつも、その状態を切り上げる気にもならず彼女の発するだろう言葉を甘んじて受け入れられるくらい心が広がっていた(笑)。 話を聞くほうが得意な私にとって明のように自己主張を明確に持っている人間の話を聞くことはひとつの楽しみでもあった。その態度が明にとっても楽だったようで、彼女を横に座らせてひなたぼっこがてら、小一時間くらい話し込んでいたと思う。彼女の話しにつられていつもより饒舌になっている自分がこの春の陽気と相まってとても新鮮だった。
思えば彼女とこんなに話をするのは初めてだった。時間が経つにつれてそれを楽しんでいる自分を自覚していたし、どちらからともなく提供されるとめどない話題が続くことをありがたく思った。だが、我々の持ち時間は限られていた。駅前に電ちゃんの姿を認めて、明との話を切り上げねばならない必要を感じた。相変わらず強い春の日差しに気付き、かぶっていた帽子を彼女に返した。それと同時に目配せをして彼女の気を駅前に向けた。
程なくして駅前に集合した我々はそのまま電車で帰途についた。
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