きりんの脱臼
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ここは、なかはられいこ(川柳作家)と村上きわみ(歌人)の
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あいさつはしたし雨だし、だいじょうぶ なかはられいこ
むかしむかし、とある森の奥に「どうしようの人」がひとりで住んでいました。 「どうしようの人」はとてもこわがりなので、四六時中「どうしよう」と考えて 夜も眠れませんでした。 ・・・眠っているあいだに空が破れてしまったらどうしよう。 ・・・明日の朝、枕元で巨大な栗鼠がじぃっとこっちを見ていたらどうしよう。 「どうしようの人」はどうしようと考えるのが仕事のようなものなので、こんな ことはいくらでも思いつくのでした。
同じ頃、川のほとりには「だいじょうぶの人」がひとりで暮らしていました。 「だいじょうぶの人」だからといって何事にも確信をもっている、というわけで はありません。「困ったなぁ、でも、だいじょうぶ(確信はないけど)」という のが彼の基本スタンスです。まあ、口癖みたいなものです。けれど「だいじょう ぶの人」はその口癖のおかげで、とりあえず夜はぐっすり眠れるのでした。
と、ここまできて「当然この先ふたりはどこかで出会うんだろう」と思った方に は申し訳ありませんが、ふたりは一生出会うことなく終わります。 「どうしようの人」は森の奥で、「だいじょうぶの人」は川のほとりで、ふたり 別々に「どうしよう」「だいじょうぶ」と言い続けながら、生涯を終えます。 それだけのお話。教訓もオチもありません。
でも、ちょっとだけ、会わせてみたかったよね。
雨なので ポケットの中のくしゃくしゃのレシートをわたしにくださいな 村上きわみ
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