きりんの脱臼
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ここは、なかはられいこ(川柳作家)と村上きわみ(歌人)の
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乾かない昨日の水着はくようだ淋しさだけで重ねたからだ 望月浩之
がまんできないことっていうのは世の中にたくさんある。 穫れすぎたキャベツみたいにそのへんにごろごろ転がってる。 ほったらかしにされて。 なかでも、湿ったままの水着をつけなきゃいけないケースっていうのは、 上位にランクインされることまちがいなしだ。 サイテーだもの。
ふだん外気に晒されたことのない皮膚に、 じとーっと冷たい布が触れる、あの瞬間。 ほんのかすかになまぐさい匂いが立ちのぼる。 まるで爬虫類かなんかと肌を合わせているみたいでぞっとする。 ああ、思い出すだけでも全身に鳥肌が立つよ。
*
悪かったわね。 乾ききれてなくて。 だからってそんなに嫌わなくてもいいじゃない。 右の足を通るとき、思いっきり顔しかめたわね。 続いて左の足を通るとき、ふかーいため息をついた。 ええ、ええ、悪かったわよ。 あたしだってこんなつもりじゃなかったんだから。 あなたが身体を押し込むのに苦労しなきゃいけないほど、 カラカラに乾いてきちんと縮んでいるつもりだったんだから。
湿ったあたしの内側があなたの乾いた肌をじっとりと包みこむ。 あなたの体温であたしはゆっくりとあたたまってゆく。 そして、ほんのかすかに水蒸気が立ちはじめるころには、 あなたはあたしに親しんでさえいるんだわ。 あれほど不快だったはずなのに。
「やれやれ、なんてやっかいな……。」 って思ってる? 生乾き 朝の線路も樅の木も なかはられいこ
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