きりんの脱臼
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ここは、なかはられいこ(川柳作家)と村上きわみ(歌人)の
コラボレーションサイトです。(ゲスト有り)
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大きいおたま/小さいおたま/(おたまなし)リケンのわかめスープの鍋に 庄司一也
《1月17日》
徳用折り紙(200枚入)とブロッコリーとバスマジックリン購入。 帰宅すると郵便受けに紙片が差し込まれている。
良いあらせいとう、悪いあらせいとうを束ね *
まただ。 このところ毎日のように、なにかしら書かれたメモが差し込まれている。 良いあらせいとう?
《1月18日》
そういえば、昨日は大きいおたまを買うはずだった。 肝心のものはいつも失念される。 気をとりなおし、 カステラのレシピをにらみながら卵白をホイップするも、挫折。 そもそも忍耐というものに欠けている。
思い立って郵便受けをのぞくと、またも紙片が。
(技をでかすという言い方はあるか、ポール?) *
そんな言い方はない。だいいちわたしはポールではない。
《1月19日》
むかしの恋人から電話がくる。 といってもロマンティックな話ではないのだった。 彼が手掛けている企画について、なにがしかの感想を述べよという。 いきなりそんなことを言われても困る。 そもそも“ノルウェーにおける避妊のありよう”についてどんな感想をもてばいいのか。 「むかしのお前はそんなじゃなかった」と元恋人が言う。 そんなこと、知ったこっちゃない。
今日の紙片。(そろそろ慣れてきた)
ええい神妙にお縄につけ *
言われなくてももうじゅうぶん神妙だ。
《1月20日》
朝から微熱。
喉猫もらっきょうもバイオリン族も *
そしてわたしも、と書き加える。
《1月21日》
体温上昇。 大きいおたまのことばかり考えている。 買い物には行けそうもない。
束ねたものを束ねたものを束ね *
もうこれ以上は。
《1月22日》
38.5°
束ねっぱなし、断を下さないこと *
もうとっくに。
《1月23日》
40.3°
番号はつけっぱなし、結論を持ち越すこと *
まだ持ち越せというのか。
《1月24日》
41.0° 水ばかり飲んでいるせいでからだの輪郭がゆるんでいる。 こわい夢をエンドレスでみていた。 夢の中のわたしはむごいことをいくつもする。 そういうわたしのことを、わたしは嫌いではないのだった。 夢のなかのむごいわたしを、現実のわたしが擁護する。 これは単にバランスの問題ではない。
表は組みっぱなし、先延ばしすること *
馬鹿げている、と、言ってしまえばなにもかも馬鹿げている、けれど。
《1月25日》
紙片がとぎれる。
《1月26日》
今日も来ない。熱、さがらず。
《1月27日》
40.5° うわごとばかり言っていると、すこしだけ自分がいいものになった気がする。
まずここにからだを置いて いつだってあなたが望むものならぜんぶ 村上きわみ
*印はすべて庄司一也の詩より抜粋
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