403 Forbidden

2004年05月08日(土) ひとり

形骸化した体が横たわっていた。

根拠の無いシグナルが脳内に有るべきでない分子を誘発させて、
深く眠り込んだ後のような感覚を起こした。
やがて、めまいの後の一瞬の空白を跨いで、
今まで見たことのない色の世界が広がった。

見たことの無い部屋。
僕の横には別の体が横たわっていた。
そして、こちらを見ていた。

この部屋にはふたりっきりしか居ないようだった。
ゆるりと体を持ち上げると、
今まで頭蓋に収まった脳に潤沢に血液を送っていた心臓が、
負荷に負けじと大きく鼓動した。
その鼓動は自分自身が驚くほどで、
それは、半ば死にかけていた体のどこに
そこまで生きようとする力があったのか、
今まで考えていたことも無い想いを巡らさせた。

彼はゆっくりと体を起こすと、その美しさには不釣合いなほどの
大きな欠伸をして、何か言った。
犬がじゃれる時のような、ねっとりとした言葉。

部屋の空気はまた平静を装っているようだ。
朝なのか昼なのかもわからない、生活感の無い部屋。
無性に目の前にあったテレビの画面を割りたくなって、
テーブルの上のオイルライターを掴み上げ、
勢いよく叩きつけた。

塊が砕け散る音の変わりに、ガツッっと鈍い音を立てて
また静寂が訪れた。

気が着くと、僕は一人だった。
こちらを見ていた目は、自分自身だった。
僕はそいつに面と向かって、
本当はどうしたかったんだい?と聞こうとしたが、やめた。


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