12月になった。
寒くなると、どうしても君の事を思い出す。 早朝、吐く息が白い中、普通電車を乗り継いで逢いに行ったこと、 使い捨てのカイロ、 寒空の下のサッカー場、 風力発電のプロペラ、 やたら綺麗だった夕焼け。
実は去年の今頃、連絡を絶ってから 初めてキスをした公園にわざわざ行ったことがあった。 馬鹿な男特有のノスタルジックだ。
駅からレンタカーを借りて見覚えのある道を行くと ガラス張りの建物が見えて何故か胸が苦しかったのを覚えている。 その日も、綺麗な夕日にはわずかに雲が掛かっていて それはあのときの夕日と何ら変わらなかった。 そして、その風景は僕を励ましているような、 その一方で諭しているような、 なんとも言えない気分になった。
一度そこから君に電話しようとして、でもすぐに止めた。 あのとき電話をすればよかったのかもしれない。
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ゆっくり時間を掛けて、 僕等はなんとか信頼関係を回復した。 君の事を話してから彼女の精神状態がかなり悪くなってしまって、 そのことで僕は最終的に君を諦めた、という形になったのだが、 その後、今度は僕のほうが精神状態が悪くなったり、 無理な生活を重ねていたりもして、 結局ここまで来るのに半年以上掛かったことになる。
その一方で、僕等は、やはりこのままではジリ貧で、 出来れば穏便に別れた方がいいだろう、ともお互い思っている。 だが主に向こうの両親の問題や、彼女の叔父の問題、 僕の仕事の問題、彼女の仕事の問題に対して 少なくとも先鞭をつけるまではその話は置いておく、 という雰囲気になっている。 でもそうこうしているうちに年を越してしまいそうで、 何も出来ずに時間だけが過ぎてしまっている感じがどうにも苦しい。
これらを全て放り投げるように清算して別れるという 選択肢もあったにもかかわらず、 それを最終的に選べなかった自分の弱さは それこそ毎日のように後悔という形で身近に感じている。 でも、それをしなかったし、出来なかった。 そういったことも君にも一切言わないと決めたのだけれど ただ勇気が無いだけだった。 初めに決めた「君には嘘をつかない」という言葉通り、 全部話すべきだったかなぁ、と思ったりもする。
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そんなことを考えながら、毎日を暮らしている。 君への想いは、少し薄くなったかもしれないし、 何か違うものになったような気もする。
諦めなければ夢は叶う、と 今日、僕の携帯電話の待ちうけマスコットが言ったのだが、 諦めるかはともかく、只、想いは想いとして持ち続けている。
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