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長崎県「子午線」同人 吉田美和子 西日本新聞より 好物をおみやげに 美術館の前で君を待つ 黒いニット帽を目深にかぶり 片手を小さくあげて現れた 絵画展の中を並んで歩く この空の色 好きだな・・・ 共有する静かに流れる時間 やがて 春の陽気に誘われた人々で あふれかえる天神に向かう 林立するビルを見上げる君が 独り言のようにつぶやく 俺ならもう少し磨けるかも 君の視線の先を追う ビルの大きな窓ガラスだ 俺のバイトはいいよ・・・ きれいになったと喜ばれて こっちまで嬉しくなる 親元を離れて1年 屈折した思いを抱いて 始めた暮らしではなかったか しかし迎えてくれたこの地で 多くの人と出会うがいい 多くの体験をするがいい 風に乗り空を旅する黄砂より さらに広がる夢を持て じゃあ また・・ 振り返らない背が街に消えた 母にも子にもとても共有するものがある 数年前の私、いえ、今の私にも、そして息子にも。
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