キッシンジャーの日々
キッシンジャー



 誕生日

僕は目を覚ました。

人と会うのは億劫だったが、バイトへ向かった。

バイトはこないだ、ちょっとサボってしまった。

風邪ってことにして。

なので、今日は演技するのに大変だった。

世の中、あんなあからさまな嘘が通用してしまうんだ。

とても恐いと思った。

もうするまい。


バイトが終わって、昨日の今日だったがなんとなくバーへ行った。

麻衣子さんがいた。

彼氏もいた。

僕は挨拶をしてカウンターに座った。

チャッピーさんが来た。

持っていた花束を麻衣子さんに手渡し、こう言った。

「おめでとう」



…、なるほどそういうことか。



それから麻衣子さんの誕生日会が行われた。

彼女は彼氏と一緒に嬉しそうに笑っていた。

僕がカウンターに常連の人と座っていると、彼女がやってきた。

「彼が手紙をくれたの」

幸せそうな顔で彼女は言った。

ラブレター。

最近書いてねえなあ

と思いながら、彼女が音読しているのを横で聴いていた。



始終幸せそうな彼女とその彼氏を横目に、常連が僕に言った。

「ああいう風に女を幸せにできる男にならんとあかんな」


…その通りだと思った。



Dear Maiko:Happy Birthday!

2003年02月06日(木)
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