キッシンジャーの日々
キッシンジャー



 懐かしき日々

久々に東京から舞い戻ったまーと再会した。


というわけで…

大学の写真部部室で大いに盛りあがろうって魂胆さ。


集合。


仕事帰りに向かいました。

部室にはすでに何人か集まっていた。

まー、岡本氏、村上野郎、えが。

そんなこんなで、


乾杯!


んで、

何話したっけ?


あんま覚えてないなあ。

キレが悪いな、俺。

あの頃はキレがあったなあ。

はあ。

和田アキコの

「♪あの頃は〜」

なんて唄が聴こえてきそうだ、全く。


○ナカ、M尾、F田さんがさらに合流。

少々手狭になったんで、

近くのサイゼリアへGO!なわけ。


サイゼリアでさらに何人かと合流。

M本さん、ナカバ−さん、シエロさん、そんでもってパタノも。


総勢何人だ?

わかんねええ。


そっからは駄話。

○ナカと

「これからどーすんの?」

ということをひたすら話した記憶あり。

そんなもん。


今の俺なんて、そんなもん。


サイゼリアを出た後、

キレをなくし、自信を無くした俺は

いつものバーへ駆け込んだ。


「俺に愛をくれ、力いっぱいの愛を!」


そう、心の中で叫んだ。


カララン。


いつものように店のドアを開けた。

中には何人か常連がいた。

今夜のバーテンは大学の同級生だ。


カウンターの奥を見た。



…ツジモトがいた。



ツジモトは大学の同期、バーテンとも仲が良い。


「お〜!!」
「よぉ〜!!」


俺達はともに、奇声ともつかない声を上げ、抱き合い再会を祝した。


実は俺は、彼にどうしても会いたかった。

その理由ももちろんあった。


彼は、今年の去る月、母親を亡くしていた。

それを知ったとき、俺は無性にツジモトに会いたくなったのだ。

彼に会いたい。

会って、頑張ってるあいつに

「ようがんばったな」

って心から言いたかった。


だから今夜は、俺が切り出した。


「おまえとどうしても会って言いたかったことがあるんよ。

「ほんま、ようがんばったな」


彼は最初、普通に振る舞っていた。

でも、次の瞬間、堰を切ったように彼は語りだした。

「俺、葬式のとき、オヤジが火葬場のボタンを押すとこ見てさ、『ああ、オヤジ頑張ったんだな』って思ったんだ。
でもさ、俺はさ、泣けなかったんだよね。母親が死んでもさ。なんかさ、実感無くてさ。
東京の家に写真を飾ろうと思ったんだよ、家族のな。
でもできないんだよ。俺ってそんなんじゃないしって思ったりしてさ。
仕事もありがたかったな、最初は。忙しくてそれだけ忘れられるしさ。
でも、でもさ、それっておかしくねえか?
俺はさ、つくづく思うんだ、『俺は本当に冷血なんじゃないのか』って。
今までもそうだったし。
そう思ったらさ、俺は一体どれだけの人を傷つけてきたんだろうって、

それが哀しくてさ、イヤでさ…」


ツジモトが俺に涙を見せたのは、そのときが初めてだった。

ツジモトという一人の小さな存在が、その全身を震わせて、泣いた。


どんなに辛かったろう、どんなに寂しかったろう。

彼が今まで味わってきた気持ちが痛いほど伝わってきた。

そして、

僕も泣いていた。



ありがとう、話してくれてほんまありがとう。

これまでようがんばったな。



僕達は、そうして浮かばれなかった気持ちを

天に還した。



顔を上げたツジモトはすがすがしい顔をしていた。


そうして僕らは、

他の常連と飲み直すことにし、朝を迎えた。



…早朝、7月の日差しはすでに強く、僕の心を焦がした。


部室に帰るとまーは寝ていた。



次もまた会おう、友よ。

2004年07月18日(日)
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