翠の日記

2002年11月10日(日) 「天国への階段」

 復讐というよりは、絶望。ささやかな希望も全て絶たれてしまう。
 それとも、こう感じるのは、復讐=殺人という図式が浮かんでしまうせいからかもしれません。
 若き日の柏木の置かれた状況はとてもつもなく悲惨で、救いがたいものがあり、もし自分だったらという仮定すら難しいですね。
 絶望の底から出発し、成功することができたのは、彼の考えた復讐の一念があったから。そんな柏木を、「「ちっぽけなささいな復讐」のために人を殺したんだ」と断罪する桑田刑事の言葉は胸に突き刺さります。
 どんな誤解も、情状酌量も「殺人」という罪をなかったことにすることはできません。そのことを、柏木は理解し、苦悩しますが、その結末は、償うことを放棄したように私の目には映りました。
 罪を被って死んでいった児玉との約束は?
 一馬との約束は?
 警察に柏木を渡すまいとした一馬は、柏木を許さないからこそ、その選択をしたはずなのに、何故最後に許してしまうんでしょう。
 桑田刑事ではないけれど、やはり実の父親には勝てないのか? と思ってしまいます。
 そして柏木は何故、許されようとするんでしょう。
 ボロボロになりながら生きて欲しかったですね。約束を守らない男はダメですよ。守れないくらい弱いなら、誓うなと言いたいですね。児玉がとっても不憫でなりません。
 こんなこと言ってても、面白くて、乗り換え駅を通過して遅刻しかけたり、バスの運転手に終点になってから声かけられたりするくらい夢中になって読んでました。


 < 過去  INDEX  未来 >


翠 [HOMEPAGE]

My追加