担当のKさん おでこに大きな青アザができています 職員のヘルパーに聞くと 「自分で起き上がって ベットの柵にぶつけたのね・・・」 このところ衰弱していて 起き上がらなくなってしまったので 職員も油断したのでしょうか それにしてもアザと言うかコプになっていて 保冷剤で冷やしているようで もうとけきった保冷剤が置いてありました 保冷剤を取り替えて 少し水の中で溶かしてから ハンカチに包んでおでこにあてました 「痛いよ・・・芯まで痛い・・・」 と うとうとしながら言います 「何も悪いことしていないのに どうしてこういう目にあうんだろうねぇ」 と 独り言のようにつぶやくのです Kさんの被害妄想は私が付いたときから 変わらずに持っていて 年を取るごとに威力は弱まってはいるものの 消えることはありません こんな思いを持ち続けて 家族から離れている様子は 痛々しいものがあります
Kさんが5年前に選んだ道 ゛子供たちにはそれぞれの生活があるのだから 自分は施設に入って暮らす゛ そのころ抱いていたイメージとは かけ離れた生活を余技なくされているのです 「誰もうちのものが来ない こんなところにいるのに 迎えにも来ない」 そんな思いは 更に被害妄想を掻き立てるようです 「ご飯の後に飲まされる毒が 私を具合悪くさせる」 「熱い・・・熱い・・・だから目が見えなくなった」 「向こうの窓から私を狙っている」 「私を殺そうと誰かが来る」 ・・・とまぁ こんな言葉の連発なのです 表情もなくなってしまい 「死にたくないよ 私死んじゃうよー」 「お母さん助けてー」 そんな精神状態を1時間でどう変えられると言うのか ただただ手を握り 『大丈夫 大丈夫だからね』 こんな時はそうするしかないです 「あんたにしがみつきたいー」 『しようしようーーー』 しばらくの間 Kさんと抱きしめあうのです 96歳のKさん 平安な気持ちで過ごせるようになるでしょうか この世に心残りがあるのではないでしょうか ゛このままここで死にたくない゛ 帰るに帰れない ここに居たくない 職員に対する恐怖感 被害妄想・・・ ・・・精神上いいことないのです 「何も悪いことしていないのに」 毎日口癖のようにいう言葉 被害妄想にさせるような介護をしているのではと ヘルパーを疑う気持ちにもなってしまいます
ナースと相談して この妄想の言葉の裏に 何も裏づけする行為がなかったかどうか 調べていく必要があるのではと話し合いました 歴史のある施設なのに 長く勤めている職員はわずかです 何かが狂ってしまった大きな歯車の中で いったいKさんのために何ができるでしょうか・・・
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