七竃雑記帳
桂木 炯



 インスタント






(造語)
〔instant=即時〕 ちょっと手を加えるだけで、すぐ食べられる(使える)




粉にお湯を注ぐと直ぐに茶色い液体が出来上がります
でも味はぺらぺらとした感じ



けれども
人は


面倒くさいことをいかに簡単にするか
便利にするかで発展してきた生き物なので
その努力たるや凄まじいもので
同時にすばらしいもの



問題は
その努力の課程を飛び越えて
紛い物が出現するということ



誰もが同じような
手法で少しのオリジナリティを含んで
世間に広まるというのは
悪いことではないけれども



ぺらっとした味のものが
色んな人によって努力の末に出来上がったもので
そして大元のホンモノはあんな味だけれども
これはこれで、それに近づこうと努力した結果の
こんな味



だと
知っていて飲むわけだけれども


出来上がった“そんな味”がホンモノだと思って
そこまでで納得していく人が増えたことが


最近の
大量消費に繋がっているような気もするなぁなんて
ふと思った



新しい物が努力の末、周囲に欲されて産まれる片隅で
ようやく出来上がった物の一部が壊されて
違う場所で“新しい物”という紛い物が出来る


その近くでは
大昔の新しかったと少し昔の新しかったが無理に配合されて
“新しい”という名前で表に出る
少し前しか知らない世代は
それが本当に新しい物だと思う
でも
それも
唐突に消えていって
古いという名前すら与えられることもなくて


ようやく出来上がった“新しい”までも
紛い物に混ざって
消えていってしまう恐ろしさを
感じる人はいないものだろうか?



面倒な古いやり方が素晴らしい
という事ではなくて
それが
簡単で素晴らしい
に変わる課程で面白い呪いがかかってしまって
新しい物までが
突然に「意味を含まずそこにある物」に変えられてしまう世の中って
とても不思議だ



そう思って結局
ドリップした液体を手元に置いてはみたが
それは
少し紙臭く
少し電気製品らしい味がした













人って秋になると
唐突に“考える生き物”になれるものですね(笑)






2002年11月13日(水)
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