あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 卯の花くたし 2002年06月28日(金)


こっそりと君をおもう

君の立つ場所は
夜と昼のあわい
夏と春のゆきあい
不確かな場所で
息を吐き息を吸い
ささやかな反復を繰り返しながら
君の声はいつだって
震えていた

僕らは喉を震わせ
幾つもの音を生み出したが
単なる空気の振動が
どうして幾つもの温度を持つのか
不思議に思いもせずに
ただ君という小波の心地よさだけに
僕は溺れていた

耳朶でふるい落とした幾つもの声を思い出し
少し切なくなる
拾いに行くにはもう遠すぎて
まだあの場所に転がっているだろう
欠片たち

並んで歩きながら
こっそりと君をおもう
手を繋いでも繋がらないのは
置き忘れてきたからだと




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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe