あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 即興ニ題 2002年09月18日(水)

柄にも無く頑張ってみた痕跡をふたつ。
ネット界のひきこもりな傾向は相変わらず、なんですが。


〜※〜※〜※〜※〜※〜※

「空耳ばかり」

歩いていってしまったので。

夏をいつまでも引き留めているのは
跳躍する翅のきらめきでもなく
うつむかない向日葵でもなく

(君は、歩いていってしまったので)

季節はずれの木蓮の花、とか
秋のような夏のような雲のかたち、とか
……ねえ

ねえ、

呼びかけてしまって
けれど君は歩いていってしまったので
茂みに落ちた声を拾うために
僕はしゃがまなくちゃいけない

君が、歩いていってしまったので
夏はいつまでも留まって
あの日の君の声を
繰り返している

君が、あるいていってしまったので



※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※

「Phantom pain(幻肢痛)」

花の香りがして
誰かに腕をひかれた

いや
どこにもない、花なんて
九月の夜気はあおく
俺は右の腕も左の腕もなくしたままだ

──あ、きんもくせい
  そうだな便所の香りだな
  いやだわそんな下品な
  いいにおいだね、おとうさん

  ( おとう、さん? )

両肩が重くしなだれるのは
温もりがある気がするからではなくて
耳がこそばゆいのは
誰かの声が聞こえるからではなくて
迷うのは
いや、迷いなどしない
ここにあるのは四角い石の建物ばかり
お父さんという名の生き物や
お母さんという名の生き物が
暖かくて小さな生き物とつながって歩く
場所など無いのだ
俺の両手は
とっくに犬の餌になっちまった

それとも、と振り向きかけて
工事中の道の段差につまづいた

ああやっぱり、俺は歩いていたのか

〜※〜※〜※〜※〜※

お題が与えらるという条件が、実は好きなのかもしれない……と一瞬おもったんだけど。どうなんでしょう。
どちらかというと、自分が書きたいと思っているものが何のか把握してなくて、名づけられないでいるって事なのでしょう。
だから、書き始めに思っていた場所と、全然違う場所へ着地してたりする。
これは、欠点、なのでしょう。
いろいろ、考えました。

とりあえず。
その場所のことを、エンピツに書いてくれた方に感謝。
です。


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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe