デコラのひとりごと。
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ドンドンパチパチと、花火の音が聞こえていた。 お盆に墓の前で花火をするという風習が珍しいことだと 知ったのは、故郷を出てからのこと。 それでも私にとっては、懐かしく馴染みのあるこの光景。 ドンとかまえた大きな盆提灯に火を灯し、 夏の夕暮れ、まだうす明るい空の下、小さな花火大会が催されるのだ。
それから一度家に戻り、精霊船を運び出す。 1m大くらいの小さな船に小さな提灯をいくつか下げて、 果物や亡くなった人の好きだったもの等を乗せて海に流す。 昔はそこらへんの海に流していたものだったが、 最近は環境がどうのとうるさいらしく、沖まで出なければならないそうだ。 そこで我家は、業者の出すフェリーに乗ることにする。 フェリーに乗ったのは、うちも含めて50隻ほど。
沖に出た頃にはもう空も暗く、見上げると満天の星。 提灯と線香に火をつけて、次々と精霊船が暗い海に流されてゆく。 それは、幻想的でどこか物悲しく、そして美しい光景だった。 父の船は、先に流した船よりも早くグングンと我が道をゆくふうに 進んで行き、それはとても彼らしい姿でもあり家族の微笑を誘った。 私たちは、いつまでもいつまでも、お父さんの船を見送った。
decora
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