デコラのひとりごと。
TOP|←|→
「私、今日カベチョロみたいな目しとるけど、びっくりせんでね」 「かべちょろ?」 「トカゲよ」 朝、いつも車に乗せてくれる会社の友達にモーニングコールをした時の会話だ。 ハハーン、泣いたな・・・と、私は思う。
「別れた」 と、彼女は予告通りのトカゲの目をして言った。 何度も別れてはヨリの戻っていた彼と。今度こそは本当に。 なんとなく、そうかなと思っていたので「うん」と私はこたえる。 「んで、Kくんと付き合うことにした」 今度はええっ!と驚いて、彼女を見ると 腫れて潤んだ目なのに、なんだかとても幸せそうな笑顔だ。 Kくんは私の知らない人だけど、何度も彼女から彼の話は聞いていた。 もう随分昔から彼女に夢中な男の子。 だけど彼に対する彼女の振る舞いは、とても彼女らしくないヒドイ感じ だったので、私はなんとなく彼女に彼は合わないんじゃないのかな、と 前々から思っていた。 自分の中のわがままで嫌な部分を前面に引き出させる相手というのがいて。 彼は、彼女にとってのそういう存在なんだと思っていた。 付き合う相手は、その人の可愛い部分を引き出してくれる相手でなくては。 私はそんなふうに思う。だから、それをそのままに伝えた。 しかし、彼女の言うことには。 「私、今まで彼のことをちゃんと見てなかった」 好かれて当たり前と傲慢に思っていて、対等ではなかった。 でも、これからは正面から向かい合いたいと思ってる。挑んでみようと思ってる。 ・・・それが彼女の出した結論。 何度も付き合おうとしてはダメだった相手なので 私はなんだか腑に落ちない気分だったけれど、 それでも彼女の嬉しそうな笑顔を見ていたら「それもアリかな」と思えてきた。 それに、たまたま別れた夜にたまたま彼から電話があった、という偶然も なんだか運命のような気もして。それも縁かなぁ、と。
それにしても。 一瞬のうちに落ち込んで、一瞬のうちに立ち直る彼女のパワーには いつも驚かされる。そして、そういうのは嫌いじゃない。 むしろ、彼女の前向きさには何度助けられたことか。 一緒にいると元気になれる、そんな友達だ。
「そろそろ、幸せになってよね」 会社に着いて、車から降りる時に私がそう言うと、 「そーやろぉ〜?そう思うやろ〜?」 と、彼女は豪快に笑った。そうして、相変わらずトカゲの目をしたままで 「今日は、なんだか嬉しい気分よ」 と、ふんわり微笑んだ。
decora
|