ヤマダの日記
ヤマダ



 星降る夜に君にふれれば 6

■ 第6夜 ■


 唇に暖かさを感じた後、直ぐに痛みに襲われて目が覚めた。
 「シリウス?…大丈夫?」
 「ちょっと足を挫いたみたいだ。」

 そう言って、足を見るとさっきよりも酷くなっていた。これでは歩くどころか起き上がることさえ難しくて。
 その様子を見たリーマスが眉をしかめる。『凄く痛そうだ…』とまるで自分の事のように悲しむから、反対に『大丈夫だから…』と慰めてやった。
 どっちが怪我をしているのか分からなくなってくる…と思わず苦笑してしまった。

 そうだ。
 こんな風に自分の事を案じてくれるのは、『子供扱い』ではなくて、『同じもの』として見てくれているから…なのかも知れない。
 多分、オレのこの考えは当たっているだろう。
 リーマスは今までずっと友人はいなかったと言っていた。だから、初めて内側に踏み込んだオレ達を『自分と同じように』見てしまっていたのかも知れない。
 その考えに漸く辿り着いた気がした。
 


「少し、痛むかも知れないけれどがまんしてね。」

 リーマスはそのままおぶろうとしてオレの身体を引き寄せた。何度か試してみて、ようやく身体を持ち上げた。泥や雨に体中びしょびしょだったけれど、直に触れあった部分からはリーマスの温もりが感じられて、さっきまでの不安な心持ちは吹き飛ばされていた。安心できる。…そんな感覚。
 ザクザクと、小降りになってきた雨の中をしっかりした足取りで戻っていく。女の子と違って重いだろうに、リーマスはずっとオレの事ばかり心配していた。少し休もうと言っても、『君の足を早く手当てしないとね…』とやんわりと断ってくる。…なんだか申し訳なくて、いたたまれない気持ちになる。

 「リーマス…」
 「なぁに?」
 「…ごめん」

 このオレが謝るだなんて思ってもいなかったのだろう。一瞬足を止めた後、『…大丈夫?』と神妙な声で聞いてくるから、分かっているけれどカチンときた。どうせ、オレは我がまま一杯、甘やかされ放題の権化だよ!
 拗ねていると、『ごめんごめん』と笑うから、余計にむむっときたが、先程まであった不快感は無くなっていた。
 …リーマスが近くに存在していることを悟ったからかも知れない。


 ぎゅっと背中に頬を付けて、赤面した顔を見られないように覆い隠した。


 ……押し付けた頬にリーマスの体温が伝わってきて心地よかった。












 家についたのは、30分程歩いた(といってもオレはおぶられたままだったけれど)後だった。二人ともびしょぬれと泥だらけの酷い有り様だったので、『まずはバスタブに湯をはってくるね』と、階段が広がるエントランス部分の脇にオレを丁寧においていそいそとバスルームに走っていった。
 少ししてから戻ると、『あと少しで用意できるから…』と再びおぶってバスルームまで運んでくれた。そこにはすでに着替えまで用意されていて、『なんて用意周到なんだ!』とその素早さと心遣いに感動してしまった。ホント、リーマスは十分嫁に行けそうだ。…本人にそれを言ったら怒られそうだけれど。
 そうこうしているうちにバスタブにはお湯がたまったようだった。
 「先にシリウスが使って?」
 ゆっくり暖まるんだよ?と言うから、バスルームとバスタブの広さも考えて、「一緒に入ればいい」と誘ったけれど、「僕は後でいいよ」と断られた。けれども、びっしょり濡れているのも泥だらけなのも一緒だし、何よりもそんなままだとカゼを引いてしまう。現に少し震えているようだったし。

 

 「いいから!一緒に入るんだ!」



 半ば強制的に言い切るとさっさと服を脱ぎ捨て始めた。リーマスはそんなオレを見てため息をついた後、『何を言ってもダメだな…』と悟ったらしく服を脱ぎ始めた。
 



 暖かいシャワーはとても気持ちよかった。そのままリーマスにもゆっくりかけてやる。お互いに手伝って十分に泥をまず落としてから、そろそろとバスタブに入った。
 二人で入っても余裕が有る広さなので、引っ付いたりはしなかったけれど、それでも妙に気恥ずかしくてだんまりしてしまう。広いバスルームに水蒸気が立ち篭めて、響く空間には弾く水音だけが広がっていて。
 なんだかテストの時でも感じたことがないような緊張があった。

 『二人で入る』と決めたのは、待っている間に決心をしたから。
 気を失う前のほんのわずかな時間、自分にとってリーマスがどんなふうに必要な人間なのかを考えていた。
 

 …そしてその答えを見つけてしまった。
 

 ジェームズに笑われるかも知れないけれど、ピーターに呆れられるかも知れないけれど。
 それでも、『好き』だから。
 『愛している』とは言えない。まだ『愛』は分からない。
 けれど、きっと。

 『恋している』

 この気持ちに名前をつけるならばそれが丁度よいと思う。愛よりも激しいもので、切なくて、不安で。…それでも『欲しい』のだ。
 感情をそのまま言葉にするのは少しばかり躊躇ったけれど、考えてみれば自分から人に伝えたことはないし、今まで与えられてばかりだったから新鮮な感じがする。
 そして何よりも。

 リーマスの喜ぶ顔を見たい…というのが大きくて。
 多分それが一番なんだろう。
 もっとリーマスの嬉しそうなあの笑い顔を見たい。
 …自分も暖かくなれるから。




 ふと視線をずらすと、じっと動かないで俯いたままのリーマスが居た。そのかちんこちんな様子に苦笑しながら、…そっと腕を伸ばした。 

 少しばかりの勇気と、思い切りと、
 たくさんの愛情をもって。


 静かに唇にふれながらゆっくりと言葉を紡いでいくと、リーマスは驚いた表情を見せた後、ずっと見たかったあの笑顔を見せてくれた。
 本当に?と何度も聞くから、『いい加減に信用しないと止めるぞ?』と脅かしたらとたんにぎゅっと抱き締められた。



 「僕も…誰よりも好きだ…」



 お互いに真っ赤になりながら顔を見合わせると、さっきまでの静けさが嘘のように大きな声で笑った。
 そうして、そのまま。

 


 伸びてきた腕が身体に触れるのをみてから、そっと瞳を閉じた。
 

 

 

 






 TO BE NEXT!








■ 漸く進展してきました。あっはっは。ここまで引っ張るのにどれだけ苦労したか。(それはヤマダさんがサボっていたせいです!)まぁ、後数回で本当に終わります。新連載はもうすぐだ!!(笑)新しいお話はぶっちゃけた話、『ラブラブ新婚激情』とでも言いましょう。いや、リ−シリのラブ〜なお話を開拓してもしたりなくて、(っつーか、ホント、みんな本出そうよ!!読みたいよ!!激しく希望だよ!!!)したりない欲求を解消するかのごとく描きます。だって、本当に解消できないんだもん。あああ〜。リ−シリ本欲しいよ!!買いたいよ!!読みたいよ!!スッゴイ濃いやつ〜!!(苦笑)23日は密かに買いに走ろうかと画策中です。しかしリ−シリサークルさんの参加が有るかが問題ですよ〜。一応お知り合いも受かっていることは本日届いた配置票で分かるけれど。うううう〜。
 期待して当日の望みたいと思います。

■ 入稿は14日に出来そうです。そういえばアルプスのインク(カートリッジ式のリボンタイプ)きれているのを忘れていて、(せっかく先日ラオックスまで行ったのに!!)また行かなければならないハメに。
 くうううう〜。仕方ない!車で飛ばすか!!(オイオイ)
 まぁ何とかします。(笑)

■ それでは、次回のアップは入稿後に!!星降るもそろそろ加筆したりしてまとめます〜。



2002年09月12日(木)
初日 最新 目次


My追加