戯言。
2002年11月22日(金)  イタタ季突入か?!(菊とリョ)

突如思いついたのがイタタネタ....もとい逝きネタ。
ごめんよ菊。


*** His Name ***


いつも通りの朝だった。

朝練ギリギリに起きたのも、朝食を食べている暇が無くて
トーストをかじりながら走るのも、来るのが遅いと他のレ
ギュラー連中にからかわれるのも。

ちょっとした違和感を除けば、いつも通り。
ただ、彼がいないだけ。
朝練が始まる時間になっても、彼は来なかった。

「皆、集まれ!」

突如、手塚が皆を集めた。
そしていつもより固い顔で話し出す竜崎顧問。

「心を落ち着けて聞くように」

嫌だ、聞きたくない。
何故か分からないが、聞きたくない。

「菊丸が、亡くなった」

辺りを静寂が満たす。

「朝練に向かう途中、居眠り運転の車が突っ込んできて、
 即死だったそうだ」


嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!
信じない、俺は信じない。
彼がもういないだなんて、信じられない!

だって。

「....まだ、呼んでないじゃん、俺」



「ね、ね、おチビ」

「何スか?」

「今度さ、オレの事名前で呼んでよ、エージって」

「........ヤダ」

だって恥ずかしいじゃん。

「え〜いいじゃん、呼んでよ」

「ヤ・ダ」

「別に皆の前で呼んでっていってる訳じゃないって。2人
 だけの時で良いからさ〜」

「またなんで突然そんなこと思いついたんスか?」

「突然じゃないも〜ん!今までは待ってたの、おチビがエ
 ージって呼んでくれるのを。でもいつまで経ってもエー
 ジ先輩止まりだから」

「いいじゃん、英二先輩でも」

「ダ〜メ。エージ、って呼び捨てにして欲しいの」

「どうしても?」

「うん、ど〜しても」

「............じゃ、考えとく」

「ホントに?!絶対、約束だからね!約束破ったら針千本
 なんだからな、おチビ」

「考えとくって言っただけなんだけど....」

「い〜の、考えといてくれるだけで」

「そういうものなの?」

「そういうものなのだ♪だっておチビ、これでオレの事い
 つも考えずにはいられないでしょ?おチビが何やってて
 も、おチビの心の中にオレの欠片がいるでしょ?」

何を言ってるんだこのヒトは....
でもそれが当たってるのが余計ムカツク。

「あ、そ。それだけならもう切るからね」

「あ、ちょ、ちょっと待って」

「何?」

「おやすみ、おチビ」

「おやすみなさい、エージ....先輩」

「うん、おやすみ、リョーマ」


これが最後に聞いた彼の声だった。
彼は、ちゃんと呼んでくれたのに。
彼の声で[リョーマ]と呼ばれると心が暖かくなった。
今もその暖かさが残っているのに。

あの声が自分を呼ぶことは、もうない。



「エ....ジ先輩」

1日ぶりに対面した彼の顔は、まるで眠っているかのよう。
呼べば起き上がって、笑顔で「呼んだ?おチビ」そう言っ
てくれるような気がして。

「英二先輩?ねえ、起きてよ」

でも、伏せられた瞳は開かなかった。
触れた頬は氷の様に冷たくて、否が応でも彼の死を受け入
れざるを得なかった。

「英二先輩....英....ニ、エージ」

名前で呼ぶって約束したのに。
約束したのに、間に合わなかった。
貴方の名前を、呼んであげられなかった。

「エージ、エージ、エージ....!」

聞いてる?貴方の名前、呼んでるよ、約束通りに。
貴方が生きていたら、お日さまのような笑顔で喜んでくれ
ただろうに。
ねえ、聞こえてる?俺が貴方を呼ぶ声。

欠片でも俺の心の中にいたい、貴方はそう言ったよね。
大丈夫、その目論見は大成功。

そう、俺は捕われてしまった、貴方という名の檻に。
もう貴方のことしか考えられないよ、エージ。


*****
とりあえず似非イタタ系。
つか菊ファンに殺されそうなモン書いてるよ自分。
でも菊ってフッといなくなりそな感じがするんだよな。

レゴとフロだと物話の展開上もともとイタタになるのが目
に見えてるので、敢えて菊とリョで。


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