戯言。
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2004年01月17日(土) 065.回復する傷[LOTR/レゴフロ]
遥か遠くまで続く、金色の草原を見ていた。
「フロド」
自分を呼ぶ、柔らかな声。
振り向かなくても分かる、自分のたった一人の人の声だから。
「綺麗だね」
後ろからそっと抱きしめられる。
その優しい腕に身を委ね、目を閉じた。
「一度だけ見たことがあるよ、シャイアの夕日を」
父上の使いでビルボを尋ねた時にね、と言い添え、続ける。
「金色の稲穂が風に揺れて....とても綺麗だった」
「何故、分かったの」
自分は何も言っていない。
なのに、何故。
振り向いてそう問うたフロドを自らの膝に座らせ、その蒼い瞳を見つめて彼は答えた。
「私も見たかったんだ、君と」
「僕と?」
「そう、君と。結局叶わなかったけれど」
あの後はいろいろあったからね、と苦笑する。
「本当はすぐにでも君に逢いに行こうと思ったんだけれど」
続けるのを躊躇うように少しだけ間を置いてから
「少しだけ怖かったんだ」
「怖かった?」
恥ずかしいことにね、と更に苦笑した。
「ここの、傷」
そっと、肩に置かれた手。
その手の下には、かつて指輪の幽鬼につけられた傷が残っている。
「全てが終わって、君を見つけた時。どうしようかと思った」
「どうしようかって?」
「身体じゅう傷だらけで死んだように眠る君を、私はただ見ていることしか出来なかった」
その頃のことはあまり覚えていない。
でも、うっすら残る記憶の中には、いつも彼の姿があった。
辛い夢を見て苦しんでいると、必ず彼が助けてくれた。
そして目覚めた自分の目に映ったのは彼の笑顔としっかりと握り締められた手。
「大事な....何よりも大事な君を、永遠に失ってしまうかと思った」
「シャイアに行って、もし君がいなくなっていたら....そう思うと、ね」
そっと伏せられた瞳は、彼の悲しみを雄弁に語っている。
あの笑顔の裏に、こんな悲しみが隠されていたなんて。
「確かに僕は死んでもおかしくなかったかもしれません」
伏せられた瞳が見開かれる。
「でも、僕は生きています。貴方が僕を癒してくれたんです」
「私が?」
「この、傷。これは僕を永遠に苦しめるでしょう。でも、貴方がいたから僕は僕に戻れたんです」
未だ悲しみを湛えたままの青い瞳を見つめて続けた。
「全てが終わって、シャイアに戻って。あれほど焦がれたシャイアの景色すら、この傷を癒すことは出来なかった」
「でも、貴方がいたから。同じ大地の何処かに貴方がいる、そう思えたから僕はこの苦しみに耐えて来れたんです」
「フロド」
「僕が焦がれていたのは、他でもない貴方だったんです」
口にして、初めて気が付いた。
そうか、僕は貴方と見たかったんだ、この金色の草原を。
強く、抱きしめられた。
「ごめんね、フロド。不甲斐無い私を許してくれる?」
この腕に、声に焦がれていたのだ。
「ここはシャイアではないけれど、一緒に夕日を見てくれますか?」
「夕日だけじゃない、朝も昼も夜も、全て共に」
「なら、許してあげます」
そう言って抱きついた僕は見ることが出来なかった。
優しく、優しく微笑んだ貴方を。
遥か遠くまで続く金色の草原と夕日だけが、それを見ていた。
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久々のレゴフロ。またもや収拾つかずに終了。
ほのぼのだった筈が何故か....(汗
題名との関連性は更に謎だったりする。
しかも原作は二つの塔の途中で止まってるんだが、ふと海を渡った後のネタが浮かんだのでとりあえず。
コレ後で見直して恥かくんだろうなぁ....