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■ ボンド・マティーニ、2種
一般的に知られるところの ボンド・マティーニやってますよと言っているお店で頼んで出てくる、 ボンド・マティーニと呼ばれるものは、 原作では「ドクター・ノオ」の
「ミディアム・ドライのウォッカ・マティーニに、レモン・ピールを一切れ添えたものを。ステアでなく、シェイクしてくれないか」
のセリフの通り作ったもので、
映画の「ドクター・ノオ」でテレンス・ヤングがショーン・コネリーにスミノフのウォッカを持たせたところから、
フォーシーズン・ホテルが、スミノフのウォッカを使ったマティーニを「ジェイムズ・ボンド・マティーニ」という名でパテントを取ったという。
【使用グラス】カクテルグラス【技法】SHAKE【副材料】スタッフドオリーブ、レモンピール 【使用材料】ウオッカ3/4、ドライべルモット1/4
しかし、よくOO7の豆知識として語られるボンドが発明して、パテントを取ろうとしていたマティーニは、このマティーニの事を指しているのではなく、別のものなんだよというのが今回の話題。
「ドライマティーニはひとつだよ。ひとつ。深いシャンパン・グラスに入れたものだ。ゴードンのジンを3に、ウォッカを1、キナ・リレのベルモットを二分の一の割りだ。氷みたいに冷たくなるまでよくシェイクして、それからレモンの皮を薄く大きく切ったやつを入れる。わかったね」
通称ヴェスパ・マティーニ。現在はリレ社が「ドライ・リレ・カジノロワイヤル」という名でパテントを取ってます。
【使用グラス】カクテルグラス 【技法】SHAKE【副材料】レモンピール 【使用材料】ドライジン4/6、ウオッカ1/6、リレブラン1/6
この、ヴェスパ・マティーニ、原作「カジノロワイアル」において、
カクテルの名前が決まったらパテントを取ろうかと考えていたボンドが、名前をもらっていいかい、とヴェスパ・リンドにたずねる場面に由来しています。
ウォッカをつかう。このことはフレミングのウォッカ好きから来ているというのが定説らしいのですが、あれほど自分の好きなものには執拗に描写するフレミングの割には、ウォッカについては銘柄すら出てきません。
アメリカでウォッカが流行ってるから乗っかっただけじゃないのかなあ。だって、飲み方にしても氷の角が解けるまで、冷やしすぎて酒の味が消えるまで冷やして飲むのが好きという、酒好きがもっとも嫌う飲み方をしてた人ですし。
で、フェリックス・レイターがウォッカは芋じゃなくて穀物がいいとか言い始めようとすると、
「こまかいことをいってもしょうがない」
・・・どこのメーカーの酒で割ったっていいじゃないか、細かいことには気にするな・・・・とのたまってます。
そういうわけで、 原作「死ぬのは奴らだ」でアメリカに上陸したボンドに、レイターはヴェスパ・マティーニを振舞うのですが、もろレイターのシュミ全開な銘柄のジンとウォッカでもって作らせます。
あと、ヴェスパ・マティーニは原作ムーンレイカーにも登場しますが、頼んだ瞬間、Mに「ひでぇもん飲むんだな」と一刀両断。 以後、フレミングがこのマティーニに飽きたのか、ヴェスパは登場しなくなります。 どうも、このMの「ひでぇもののむんだな」のセリフなんですが、リレとリレット(ひどいもの)をひっかけた駄洒落らしいという説があるのですが、真意はどうなんでしょ。よくしりません。
というわけで新潟オフではそのヴェスパ・マティーニを作ってもらいました。

キナ・リレは日本に入ってないので、それに最も近いギムレットで。 ヴェスパ(黄昏)の名のとおり。金色の液体の中のレモンの皮は、まるで夕焼けに沈む太陽のようでした。 レモンを落とさずにピールだけにすると、マティーニとは思えないくらい、酒をカンジさせないくちあたりです。
日本で本当のボンド・マティーニを飲むのは難しいですね。 だって、ウォッカ・マティーニの方のボンド・マティーニもレモンはピールするだけで中に落としてくれない。中に入ってるのはオリーブだけ。オリーブは入れちゃだめなの。入れていいのはレモンの皮だけ。
だってカクテルを飲み終わった後に、そのレモンの皮をかじるという
最期の儀式がまだ、残ってるというに。 そこまでやって、ボンド通という。
ね。フェリックス・レイター君。 ボンド・マティーニ道は険しいね。
2003年06月01日(日)
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