火曜に。そうるにちょっとイヤな感じの態度をとって。 それ以来。あたしの頭の中は悲しいくらいにそうるだらけで。 くつろげるはずの実家で。難しい顔をしまくってて。 「姉ちゃんどうしたん。」なんて。弟くんに言われる始末。
あたしって。ほんまにひとつのことしか考えられんのよね。 特にそれがそうるのこととなると。もう頭の先から足の先までそうる一色。
なんであんな態度とってもたかなぁ。 そうるがあたしのことを思って言ってくれてるのは確かやのに。 「分かった。病院行ってくる。」って。なんで言えんかったかなぁ。 そう思っては。自分のやったことを後悔しまくりやった。
あの時点では。あたしは本気でそうるの言い方がイヤやったし。 たぶんどうやったって。そうるの言葉にはうなづけんかったと思う。 正しいことを言われてるって分かっても。受け入れられんことってある。 それが最愛の人の言葉でも。どこか引っかかってまうこともある。 どっちが悪いとかじゃない。しょーがないんやと思う。
それでも。後になったら出来たような気がして。 そうるにイヤな思いさせんでもすんだような気がして。 あたしは。どこまでもドロドロと考えまくってた。
「姉ちゃん。なんか飲む?」って。夕ごはんの後で言ってきたのは弟やった。 あたしの弟くんは。去年の秋から始めたバイト先で。 お酒の作り方を覚えて。それから自分で少しずつ買い揃えて。 今では部屋にボトルが何本も並べてある。 そしてあたしとかに。よくお酒を作ってくれる。
はっきり言って。家であれだけおいしい酒が飲めると。 外で飲む気はなくなる。てゆーかあほらしくなる(苦笑)。 しかもお金かかってへんし。好みを伝えるからハズレがないし。 わが弟ながら。ほんまにありがたい。大感謝☆
「うん。甘いお酒ちょーだい。」っていつものように伝える。 「おーけー。何杯飲むつもり?」って聞かれて。 「えー。久しぶりやからけっこう飲む☆」ってあたしは答える。 「じゃああんまキツくないのにするな。」って言うと弟くんは。 手際よくお酒を作って。あたしの前に出してくれる。
1杯目は紅茶リキュールのお酒。 2杯目は桃のリキュールのお酒。 3杯目はオレンジリキュールのお酒。 それぞれソーダとかジンジャーエールとかで割って。 場合によっては。ジンやらウォッカやらを混ぜて。 レモンやらライムやらを添えて。キレイに仕上げてくれる。 それを飲みながら。あたしはままちゃんといろいろ語ってた。
3杯目あたりからちょっとずつ酔いが回ってきて。 フワフワいい気分になってきたけど。もう1杯作ってもらった。 酔ってきてから1杯飲んで終わる。これがあたしの飲みパターン(苦笑)。
最後に飲んだのはカシスリキュールのお酒。 これが最高に甘くて。めちゃめちゃおいしかった。 でも意外とキツくて。ちょっとフラフラしてきた。
よしよし。これで狙い通り。 弟にありがとうって言って。自分の部屋に戻る。
あたしは。お酒の力を借りてそうるに電話しようと思ってた。 シラフやといろいろ考えすぎて電話なんかできん。 ちょっと酔ってしまえば。いきおいで話せるような気がした。 「昨日はイヤな感じでごめん。」そう言えると思った。 酔いの勢いを借りるとか思いつく自分をずるいと思ったけど。 それよりも。ちゃんと謝りたい気持ちが勝ってた。
2コールで。そうるはすぐ電話に出た。
「もしもし。」 「もしもしー。あたし。」 「・・・なに。・・・もしかして酔ってるん?」 「え。酔ってへんで。ちょっと飲んだけど。」
お酒のことなんか言ってないのに。声色で分かるみたいやった。 なんで分かるんやろう・・・そう思いながら。あたしは話し出す。
「あんなー。昨日のこと謝ろうと思って。」 「昨日のこと?」 「うん。ほら。あたし態度悪かったやん。」 「・・・あー。あれ。」 「感じ悪かったよなーと思って。ごめんな。」
自分で思ってたよりも。あっさりと言葉は出てきた。 もっと言いにくいかと思ってたのに。伝えたい気持ちが強くて。 すんなりと「ごめん」って言えた。 そして。言えた自分にちょっと安心した。
「別にあんたが謝ることちゃうやろ。」 「・・・でも無視っぽいことしてもたから。」 「無視やなんて思ってへんよ。」 「・・・ほんまに?」 「てゆーかうちがキツかったからなんやろ。」 「・・・・・・。」 「ごめんな。ポンポン言いまくって。」 「・・・・・・。」
今度は。無視なんかじゃなくて。何も言えんくなった。 胸がいっぱいで。苦しいくらいにいっぱいで。 あたしはベランダで膝をかかえて。泣きそうになった。
寂しそうに見えたそうるは。怒ってたわけでもなんでもなくて。 あたしがそうしたように。自分の態度を反省してたんや。 そっか。あたしとそうると。気持ちは一緒やったんや。 相手に対して。「ごめんなさい。」って思ってたんや。
ただそれだけのことで。じんわりしてしょーがなかった。
そうるはその後で言ってくれた。 あたしは。見てて危機管理が足りんような気がすること。 自分を過信してるわけじゃなくても。どうにかなるやろうと思ってたり。 ときには。祈れば治るやろうと思ってたりするようにすら見えること。 そうる自身は。足首を捻ってからしんどい思いをしてるから。 悪化させると後々どんなに大変になるかよく知ってて。 だからこそ。痛みを軽視してるあたしを見てると。 イライラしてついキツイことを言ってもたこと。 ひとつひとつゆっくり言ってくれた。
今度は。言葉が最初から最後まで優しくあたしに沁みこんできた。
「分かった。ちゃんと行ってくるな。病院。」 あたしはそう答えて。それからそうるに言った。 「心配してくれてありがとうな。」 1番言いたかったことを。ようやくちゃんと伝えられた。
ねぇそうる。あたし今回気づいたんやけど。 言い合いなんかをして。ちょっと気まずくなった後とかに。 相手は果たしてどう思ってるんか・・・とか気にしたりするやん。
あたしはそーゆうときに。自分のやったことを反省しまくって。 絶対あたしの方が悪かったんや・・・とか思ってまうんやけど。 そーゆうのって。絶対どっちもが悪いんやと思うんよね。 そしてあたしたちは。きっとお互いに。 自分の悪かったとこにちゃんと気づける性格を持ってる。
だから。あぁーしまったなーやってもたなーって思ってるのは。 あたしだけじゃない。あんただけでもない。 いつだって。きっとどっちも思ってることなんやね。 だからきっと「ごめんなさい。」も「ありがとう。」も。 そんなにためらわずに。照れずに。言って大丈夫なんやろうね。
そうは言っても。これからもお酒の力を借りそうな気はするけど(苦笑)。 |