【シュークリーム作成日誌】

2002年09月11日(水) SSS#22「瀬戸口×速水」

すでに日記どころか週記ですらないんじゃあ…?
メールの返事がすこぶる滞っております。御迷惑をお掛けして申し訳ありませんが、週末には必ずお返事いたしますので。

私信:なむ様。ご本届きましたです。ありがとうございますvvv
   後でメールを送らせて頂きます!

今回のSSSは、基本に立ち戻ってみました。








【My favorite Name】



「よお!俺のバンビちゃん。今日も愛をふりまいてるかい?」

脳天気な呼び掛けが辺り一帯に響き渡り、速水はビクリと肩を震わせた。恐る恐る振り返ると、明るい茶色の髪の男が白い歯を光らせながら破顔している。 

「おはよう。瀬戸口さん…」
「なんだなんだ、元気ないなあ」

瀬戸口は小走りに近寄ってきて、腕を広げた。

(ぎゃっ…)

速水は反射的に後ろへ下がって距離を取る。その様子を見て瀬戸口はあからさまにがっかりした顔をした。

「バンビちゃんは俺が嫌いなのかな」
「いや、そうゆう訳ではないんだけど…」

速水としては困惑してしまう。瀬戸口は確かに嫌いなタイプではない。だが、初対面で抱きつかれたりしたので少々苦手意識があるのだ。近寄られるとつい警戒してしまう。今も、速水は無意識に後退していた。
瀬戸口はじっと速水の様子を見ていたが、ふいにニヤリと笑って言った。

「男は逃げられると追い掛けたくなるもんだと言っただろう。
 それとも、追い掛けて欲しいのかな」

速水の動きがぴたりと止まる。速水の頭の中に、「あははは、まてまてこいつぅーv」「おほほほ、つかまえてごらんなさいv」と白い砂浜を走る瀬戸口と自分、という悪夢のような光景が浮かんだ。一瞬気が遠くなったが、なんとか立ち直ってふるふると盛大に首を横に振る。

「そうかそうか、ん?教室にいく所なのか…。俺も学校で愛を探すとしようか」

瀬戸口は、何が楽しいのかにこにこしながら、速水と並んで歩き出した。
彼はほとんどいつも機嫌良さそうにしている。ひょっとしたら躁病の気があるのかと思ったが、速水にはしばしば真剣な顔でいろいろと忠告してくれている。もしかして、気に入られているのだろうか。
隣を歩く背の高い男の横顔を見上げると、いかにもプレイボーイ風の大人っぽい2枚目だ。童顔の自分と2歳しか年が違わないとはとても思われない。彼はおそらく経験値が顔に出るタイプなのだろう。

「あ、そうだ。瀬戸口さん」
「ん?」
「僕の事、バンビちゃんて呼ぶのやめてほしいんだけど…」
「なんで?」

瀬戸口は心底不思議そうな顔をした。

「な、なんでって…、恥ずかしいからに決まってるでしょう!?」
「俺は別に恥ずかしくないけどな」
「瀬戸口さんがはずかしくなくても、僕ははずかしいんだってば!!」
「そうか?でもそれじゃお前の事は何て呼んだらいいんだ?」
「…ふつうに『速水』とか呼べば良いじゃない」
「それじゃつまらんな」
「面白くする必要ないじゃないか!」
「う〜ん。よし!これからは『ハニーv』って呼ぶから、
 俺の事は『ダーリンv』と呼んでくれ」
「いやだ」(キッパリ)
「なんでだよ。わがままな奴だな」

(…僕が悪いのか?)なんだかものすごく理不尽な気のする速水だった。

「しょうがない。『あっちゃん』(byののみ)でどうだ?」

それなら、瀬戸口さんのことは『たかちゃん』て呼ぶよ?と、言いかけて速水はすんでのところで思いとどまった。瀬戸口なら「じゃ、それでいこう」とか言いかねない。

「普通に呼んでよ。頼むから…」
「もう良いじゃないか、バンビちゃんで。一番似合ってるよ」

(う、うれしくないっ)

「瀬戸口さん、先生の前でまでバンビちゃんは勘弁してよ…」
「わかった。教室では普通に速水と呼ぼう。
 それ以外はずーっとバンビちゃんでいいよなv」
「……」

(なんで、この人はここまでバンビちゃんにこだわるのだろうか。
 ていうか、なんでターゲットが僕なんだ。)

他にここまで変な呼び方されてる人いないよ…。と、朝から激しく疲労する速水だった。
瀬戸口は、肩を落して歩く速水をまことに楽しそうに見ている。
あるいは、単に他人をからかうのが好きだと云うだけなのかもしれない。

(だめだ…。まともに応じてたらよけいにドツボにはまる…)

決意も新たに瀬戸口を振り払おうとした速水の前で、瀬戸口がすっと人差し指を立てた。眼をぱちくりさせる速水に、眩しいほどの笑顔で提案する。

「じゃあこういうのはどうだ?」
「……?」
「厚志って呼ぶなら文句ないだろう?それから、俺の事は隆之と呼ぶように」

いきなりのまともな提案に、速水は驚きつつもコクコクと頷いた。

「よし、決定!」

瀬戸口は、ますますテンション高く速水の肩を抱き寄せた。

「不潔ですっ!!!」
「ぅわっ!?」

突然背後からの大声に、速水は驚いて転びそうになる。
振り向かなくてもわかる。きっと、壬生屋は柳眉を逆立ててこちらを睨み付けているだろう。

「み、壬生屋さん…これはね」

速水が足をとめて弁解しようとすると、背後からするりと腕が巻き付いた。

「せっ、せと…」
「た・か・ゆ・き・vだろ?」
「……っ」

文字通り火に油を注ぐような瀬戸口の言動に、速水は言葉も無く、ただ真っ赤になってじたばたと暴れるだけだった。しかし、どんなコツがあるのだろうか。瀬戸口の腕は全く緩む気配が無い。
そして、速水に負けず劣らず真っ赤になってその光景を見ていた壬生屋は、何も言わずに走り去ってしまった。速水は、やっとの思いで瀬戸口の腕の中から抜け出し、絶叫する。

「瀬戸口さんっ、なんてことを!
 壬生屋さんにホモカップル(失言)だと思われたでしょう!」
「そうか?それより、また呼び方間違ってるぞ」
「そんなことどうでもいいんです!!」

速水は、両手を色が変わる程握りしめて怒っている。瀬戸口はその手をとって、

「さあ、さっさと行かないと遅刻するぞ。
 俺はいいけど厚志は極楽とんぼ章なんて貰いたくないだろ」

爽やかなくらいの笑顔で、そう言ってのけた。
速水は、この図々しい色男に視線で往復ビンタを喰らわすと、その手を力いっぱい振り払って足早に教室の方へと駆けていく。

(いやあ、かわいいいもんだね)

と、瀬戸口は御機嫌だ。

(名前で呼ぶ許可もちゃんととったし、これからしばらくは退屈しないですみそうだ)

瀬戸口はどうもこれから思う様速水で遊ぶ気らしい。
しかし彼は今後、自分の方こそ速水の一挙手一投足に翻弄される事になるのだが、その事をまだ知らずにいる…。




Fin

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初めてガンパレやった頃の瀬戸口さんの印象そのままです。
この一年で、いかに神矢の中の瀬戸口像が変貌したか、よく判ったような気が…。
より情けなく。よりアホに。…だめじゃんよ;


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