【シュークリーム作成日誌】

2003年02月09日(日) 甘味中毒患者+SSS(ダーク)

ガッコは今日は苦手の構造計算でした。
慣れれば一番楽なはず…。と自分に言い聞かせてみる。



そういえば、先日私は、極限状態のはしっこを垣間見る貴重な体験を致しました。
といっても、他の人から見るとたいした事じゃないのですが(笑)


仕事中の事です。
時刻は10時半頃。お昼休みまであと一時間半ほどの頃です。
神矢は突然、甘い物が食べたくなりました。
「甘い物食べたい」という事自体は別に珍しくも何とも無いのですが、そのレベルが半端じゃなかったのです。
何といいましょうか。
例えるなら、麻薬中毒患者の禁断症状状態。
自分が何かを欲して発狂しそうなほど苦しい、という状態になったのは初めてです。

いつもは疲れたときのために常備しているチョコレートも飴も、その日に限って私は持っていませんでした。
私の周囲の人も、持っていませんでした。
しかも、そういう時に限って副本部長が来てて、部長に説教したりしていて、「ちょっとコンビニ行ってきまーす」などという雰囲気では全然ありませんでした。
全く仕事も手に付かず、一片の甘味に焦がれて。
昼休みまでの時間が、死ぬほど辛かったです。

昼休みのチャイムが鳴ると同時に、神矢はダッシュで1階のエクセルシオールに飛び込み、ショートケーキを購入。
それを貪り食い、やっと復調しました。

後になって思えば、私はその時、多分めちゃくちゃに眠かったのだと思います。
疲労困憊した脳が、糖分を欲したのだと思われ。
それからというもの、神矢は机の引出しにチョコレートを切らさないように注意しております(笑)


私は普通に生活している日本人なので、お腹が空いたという事はあっても、当然ながら餓えたことがありません。
でも、餓えた兵が戦えないというのは、今回のことで少しだけ判ったような気が。
だって、何かを死ぬほど欲しくて食べたくて苦しい時、他の事は何一つ考えられないのです。
それ以外のことにはなにひとつ、集中するどころか、意識を向けることすら出来ない。
上手く戦うことなんて、出来るはずがありません。
しかし否応無く戦闘中なら、それに生きるか死ぬかの状態が加わるのですから、もはや想像を絶します。



と、ここで終わっておけば真面目な話なのですがね(笑)
残念ながら、私の属性は腐女子なのです。
なんと言っても、ダメ人間次席を拝命している身でありますから。


何かではなく、誰かを気も狂うほど欲する状態とはどうでしょう、とか考え出したり(苦笑)
その人以外の事は何一つ考えられず、その人が欲しくて欲しくて死ぬほど苦しいこと。
それを瀬→速で…とか(爆)

いや、意外にも逆だったらどうだろう。
瀬←速ならこんな感じ…?






*****

【delusion】






薄暗い部屋に、大きな換気扇の回転する音だけが、空気を攪拌している。
その換気口だけが唯一の明かり取りで、やはり攪拌された光が男の影を長く床に縫い止めていた。
大きな鍵で施錠された錆びた鉄の扉から、軽い足音が近付いてくる。
それは、瀬戸口の目の前で足を止めた。
大きな瞳の濡れたように滑らかな表面が、青年の視線を弾いて光る。
瀬戸口の声は硬質だった。

「俺をどうするつもりだ」

少年は、可愛らしく小首を傾げて笑ったようだった。

「どうもしないよ。ただ…」

細い腕が伸びて、瀬戸口の背に回される。
間近で男の顔を見上げ、彼はふわりとまた微笑んだ。


ただ瀬戸口さんは此処に居て
僕だけを見つめて
僕だけに笑いかけて
僕だけを抱き締めていれば良いんだよ


速水はそう言いたいのを押し留め、ただ黙って暖かな胸に頭を押し付けた。

瀬戸口が欲しかったのだ。
生まれて初めて優しくしてくれた貴方を。
誰にも渡したくは無い。
他の人間と笑い交す姿を見るだけで胸が灼け付いた。
彼を奪おうとする者は、あのいとけなくも優しい少女でも、生死を共にした戦友である少女でも、皆殺してやりたい。
それほどまでに、どうしても、どうしても、欲しかったのだ。
気も狂うほどに、彼を欲して。

ねえ、瀬戸口さん。
僕は貴方を。
愛してる愛してる愛してる愛してる。誰よりも何よりも愛して…。

でも、これは。
貴方の言う愛とは、きっと違うのだけれど。


速水は瀬戸口を逃さぬようにしっかりと抱き締めて、薄らと笑った。
その瞳は、硝子のように澄み切っている。
青空の向こう側は無限の暗闇に通じているように、速水の真蒼の瞳は澄みすぎて底が知れなかった。
瀬戸口は覗き込んだ淵の深さに慄然とする。

室内は暗く、足元には雑多な廃材が散っていて、視界が効かなかった。
だからその時、瀬戸口はそれに気付かなかった。
それは果たして、誰にとって幸福な事だったのか。


赤黒く染まったチェックのリボンが、速水の足元で踏みにじられている。
重く濡れたそれは、生温い風が吹き抜けても、そよとも揺るがなかった。





fin
*****





こ、怖い!
いきなり火曜サスペンス。
瀬戸口→速水に比べて、やたらと生々しいのはなぜでしょう。
私、やっぱり黒さんは(←小悪魔でなく)書くの苦手かもしれません。
怖くて…(ぶるぶる)

「delusion」とは、「妄執」という意味です。「迷った心で、物事に深く執着すること」です。

この寒いのにホラーな話を思いつくんじゃない、私よ。




この日の日記がお気に召しましたら




 < 過去   もくじ  未来 >



My追加

[MAIL]