【シュークリーム作成日誌】

2003年09月16日(火) SSS#56「瀬戸口×速水 16禁」

久々のセトハヤSSSです。
そこはかとなく裏なので、それでもいいよという方はctrl+Aで反転してお読みください。






『微熱』



ゆるゆると、眠気を催すような熱が、暖かく包んでくれる。
ただでさえ体格が違うのに、眠り込んでしまった人間はやけに重かった。
だらり。と、身体の力を抜いて覆い被さっている男は熟睡している。
速水も眠かった。
けれど全身に圧し掛かる息苦しさが、眠りの扉に鍵をかける。
耳元には、眠る男の穏やかな呼気。
よほど、疲れていたのだろう。
先に眠ってしまうなんて、愛の伝道師である彼としては珍しい失態だ。
それだけならまだしも、どくのも抜くのも忘れて寝てしまうなど。
体内の微熱が速水を苦しくさせ、こんなに疲れきっているのに眠れない。

「…重いよ…」

聞こえていないのを承知で囁いた苦情は、熱く掠れる。

「…せ…っ…」

名前を呼ぼうとして、諦めた。
代わりに、自力で身体をずらそうとする。
ふとんに押し付けられて深く沈んだ腰を少しずつずらして、せめてこの熱だけでもなんとかしようと足掻く。
本当は、冷たいシャワーでも浴びたいのだけれど。
少しずつ抜けていく感触に喘ぎながら、咽喉を逸らして眉根を顰めて。
強張った肩を、ふいに力強く押さえつけられた。
悲鳴を飲み込み、息を止める。
寝惚けたように、淡くけぶる紫の瞳が目の前に。

「なに…してる?」
「なにも」

取り繕おうとして微妙に失敗した笑顔で、速水はふるふると首を振った。

「俺、寝てた?」
「…ん」

今度はこくんと頷く。

「途中だったっけ?」
「…」

ぶんぶん。と最後の質問には首を振って答える。
しっとりと汗を含んだ黒髪が、ぱさぱさと枕を叩いた。
瀬戸口は少しばかり思案深げにその仕草を眺めていたが、ふっと破顔する。
優しげな笑顔に、速水は怯えて逃げを打つ。
けれど後少しで自由になるところだった細腰は容易く捕われた。
深く深く穿たれて、声にならない悲鳴まで吸い取られ、痙攣のように震える。
頭を振って、必死で逃れる。

「途中じゃ…ないってば!」
「なら、『もう一回』?」

眠りたかったのに!と、速水は喘ぐ合い間に嘆いた。
大丈夫。と瀬戸口が自信満々に請合う。
何が大丈夫なのかさっぱり判らぬ上に、根拠もない。
この男は常日頃から根拠のない自信に裏打ちされた人であったから、今更ツッコミも無意味だ。

「『眠りたかった』って言った?」

耳元に良く響く低音の声。熱く、甘く。
遠ざかる。
遠ざかっているのは声ではなく、こちらの意識。

「寝かせてあげる」

加速する快楽。
意識がホワイトアウトしていく。
寝かせてあげるなんて冗談じゃない。これでは気絶だ。
熱い、熱い、熱く。

「…ひっ……あ……」

声も出せずにわななく唇から押し出される、吐息。
南国の果実のように、極彩色の甘味を帯びて。
綺麗な青の目をくっきりと見開いて、速水の身体が2,3度跳ねた。
そのまま、頭ががくりと落ちる。
覆い被さった男は、しっかりとその華奢な身体を抱いて、細い肩に額を押し当て、息を止める。
腕の中の、かわいそうなほど小さな生き物に、己の熱を注ぎ込む。
その感覚は、紅く灼けた鉄の上に、水滴を落としたように。
じゅっと、瞬間的に蒸発する。
意識を半ば飛ばした速水は、それでも注ぎ込まれる感覚にヒクリと反応する。

(あ。また…)

自分の上の男が、ふたたび重くなった。
眠りに入りかけている彼に失笑する。
一度は優しく許容してやったが、ハヤミアツシに二度目はないのだ。
速水は両腕と身体を使って、昼間の見た目よりよほど逞しい身体を押す。
力が入らないから、体重を掛けて転がすようにすると、思ったより簡単に動いた。
勢いをつけて、蹴り飛ばす。

「うっ!?」

床に落ちた男が呻いたような気がしたが、知ったことではない。
毛布を引っ張りあげ、両手両足を伸ばしてみる。
ダブルベッドにひとりで寝るのは気持ちよい。

「あっちゃ〜ん?」

情けない声を無視して、速水は満足の吐息をつく。

「人の上で先に寝る君が悪い」

きっぱりと言ってやると、男はぐっと言葉に詰まった。
そのまますごすごと引き下がる。
今夜は、彼はソファに寝ることになるのだろうか。
少し可哀想だな…と思いながらも心地良い睡魔には勝てず、速水はそのまま目を閉じた。





Fin

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とてつもなく内容の薄い話で申し訳ないです。
最近こんなのしか書けません。
なんとか10月までに立ち直らないと…;


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