きりんの日記
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2009年01月19日(月) やったどー!

無事、入稿しましたおつかれさま!

案内をUPしました。タイトルクリックで見本が開きます。
なんだかとってもおバカな感じになってますよ(笑)
珍しくノーマルですが、書いてる途中でこっちが恥ずかしくなるような場面もあって、自分では気に入ってます。えへ。
どうぞよろしくお願いしますー!

今回はなぜか余裕がありました。
原稿中、脳内は常に天眼状態になるのですが(いま書いてるとこより先の先を見てます)これがけっこう面白かった。
いつもなら時間がギリだったので、もっと真っ白になってヒイヒイするのに、采配は話が組み立てやすくて楽しかった。
いやー、ホントに充実した週末でした。

明日荷造りして、色々準備して……。
お買い物リストも作らなくちゃですが、ようは会場ぜんぶ回ればいいんでしょ?わかってます(笑)

止まってるメールとかもう少々お待ちください。
うふふ、今日はゆっくり寝れます。おやすみい。

あっと!
使わなかったボツ原稿を置いておきますね。
最初はシリアス大谷さんだったの……。
私的には無双臭がします。モブですけど(笑)










 それはいよいよ、天下分け目の大戦を明日に控えた夜だった。
「明日には止むと良いのだが……」
 大谷吉継は降りしきる雨の中、届いたばかりの書状を眺めてため息をついた。手にしているのは二通。
「この関ヶ原にて徳川家康を討つ、か。真正面から正々堂々。いかにもあの馬鹿の考えそうなことだ」
 一通は盟友・石田三成からのもので、とにかく勝つ。そのために吉継の力が必要だからくれぐれもよろしく頼むと、今さらに念を押してあった。
「それを家康に読まれていると承知のうえで、わたしに頼みごとをしてくる老獪な軍師殿にも困ったものだがねえ」
もう一通は、その軍師・島左近からで、内容はこちらの方が深刻だった。
 どうせ先の短い命。恰好の死に場所を用意してくれた友に感謝し、華々しく散る覚悟だった。なのに左近は、吉継に必ず生き残れと言ってきたのだ。しかも断れない理由までご丁寧につけてくれた。
「いくら家康にすべて見通されているとしても、対抗する力はこちらにもある。鬼の左近とわたしがついているのだから、そう簡単に負けはしないさ」
 この戦は、必ず勝つ。まずは信じることだ。頭が良く機転の利く家康は、己の勝利を確信できるまで多少なりとも不安を抱えているはず。だがこちらの総大将は、義の戦で負けるとは微塵にも思いはしない。なぜなら馬鹿だからだ。ゆえに序盤はこちらが優位に立てる。後はどこまで押し込めるかだが、そこは左近が何とかするだろう。
「ここで存分に働かなければ、三成に過ぎたる者の名が泣くぞ」
だから勝てる。左近が勝つと言うのだからそれで良い。
だがその先をどうするのか。あの熱血馬鹿は、馬鹿のひとつ覚えのごとく『豊臣の天下を守る』と言っているが、すでに世情は豊臣から離れ、新しい風を望んでいる。秀吉がいない今、彼に代わるカリスマを求めているのだ。
「見事、勝利をおさめた後に、三成が表舞台で手腕を振るえるよう取り計らえとは……。あの馬鹿は己のことなど考えておらぬだろうからな。結局最後まで、わたしがついていなければ駄目だと言うことか」
 ぱちん。と愛用の扇を開閉しながら、吉継は何度目かになるため息をついた。主従そろって世話の焼けることである。
「仕方がない。わたしも覚悟を決めなおさねばならぬようだな」
 燃える松明に二通の書状をかざす。赤い炎に包まれた紙は、吉継の手を離れて地面に落ち灰となる。それを足で踏みつけて散らせば、どこにも痕跡など残っていない。
「殿、失礼いたします。西軍本隊が大垣城よりこの関ヶ原へ向け進軍を始めた模様です」
 陣幕の向こうから声がかかる。
「うむ。敵に気付かれぬよう、こちらも迎えるための準備をはじめろ。ただし到着までには相当、時間がかかるだろうから……平塚。頃合を見計らって熱い湯でも沸かしてくれ。茶ぐらい馳走してやろう」
 吉継は表情を変えず、淡々と命を下した。あの馬鹿は大事な戦の前に、必ずここへ立ち寄ると予想したのだ。
「はっ かしこまりました」
 平塚も正しく主の意図を汲み、一礼をしてすぐにこの場から立ち去った。よく出来た部下である。吉継が率いる兵は数こそ少ないが、団結した力は倍以上の敵に立ち向かうことが出来るだろう。頼もしい限りである。
そして再び、辺りは雨と松明の燃える音だけが響くだけとなった。
「……嵐が、来る。人という名の傲慢な嵐が」
 耳を澄ませば、はるか彼方からこの地へと押し寄せる人の声が聞こえてきそうだ。
 吉継は閉じたままの扇を真っ直ぐに松明へと向けた。だが炎は燃え移ることなく、一瞬だけ扇の起こした風にひるんだが、すぐに赤々と炎をゆらす。
「ふっ」
 その様を鋭い目つきで睨んでいた吉継は、わずかに微笑んだのだった。


黒咲稀琳 -->