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彼女は無垢な天使だった 百合の花と自分の羽と 白さを比べて微笑んでいた
彼女は気付いていなかった 落ちた羽には白さがなかった
汚れた羽は重かった 息が詰まるほど苦しくて
汚れた羽を横たえた 天使はもう飛べなかった
涙が身体を伝っても 羽の汚れは落ちなかった
天使はもういちど飛びたくて 心を悪魔に売り渡す
天使の穢れぬ白い羽は 欲望で黒く染まっていった
彼女は再び羽を手にした 羽ばたく喜びを取り戻した だけど彼女は天使じゃなかった
少年の瞳は青く澄んだ空の色 少年の唇は赤く輝く太陽の色 少年の靴は深みを帯びた大地の色
小麦色の肌に つややかな髪
少年は軽やかに 弾む鼓動を隠さず跳んだ 溢れる力を抑えることなく 風と一緒に笑顔で跳んだ
少年の身体に雨が打ち付けても 纏う衣服は変わらなかった
やがて少年には苦難が降り注ぎ 怒りで拳に痛みを感じ 悲しみで心に痛みを感じ 涙は己を潤さなかった
肩に重いものを背負った 腕に大きなものを抱えた 足に淀んだものが絡まった
目から輝きが消え 唇から血の気が失せ 靴は汚れで黒ずんだ
少年はもう跳べない 空に嫌われ 太陽が姿を隠し 大地は裏切った
少年はもう跳べない 跳びたいと思うことも忘れていた
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