この1週間
仕事に向かう電車の中 忙しさのまっただ中の午前 午後の嵐に立ち向かう為にも 自分の為に取る昼休みの 薄汚い公園のベンチの上
あっという間に陽が暮れている事に 気付くユウガッタの瞬間 ヘトヘトで帰る電車の中
ずっと鳴り響いていたメロディーがあった
口ずさんでいたメロディーがあった
2006年11月4日 テッペルとトモッカが結婚した
その日朝から俺は泣いていた ギター持って唄うと泣いてしまうんだ
言葉が詰まってしまう
俺の青春が 走馬灯のように 目の前に映し出され
また泣けてくる
テッペルと トモッカの結婚
腹の底から祝ってやりたい
ギター持って電車に乗った
朝8時半 麻布十番の駅に着いた
コンクリートの 寝ぼけた麻布十番
大通りには すいている休日の道路 少し早いスピードでさっそうと 車が通り過ぎている
俺には 何の関係もなかった
ヒトッケのない 小道に入り テッペルとトモッカの居る教会に 向かって歩いた
また泣けて来た
なぜだかわかっていた
だけどなぜだかわからなかった
ゆみちゃんに電話した
「俺、なんで泣けてくるんだ すごく嬉しいんだ。でもなんで泣く」
そしたら、ゆみちゃんが言った
「テッペイ君だからでしょう〜」
「そうだよな。俺、今日、精一杯唄うよ。堂々とやってくるよ。アイツの為に。」
「がんばってね」 ポツリと優しく応援された俺 やるよ俺!
麻布十番のヒトッケのない静かな休日の住宅街の 長い長いのぼり坂を歩いていた時間がとても自分らしく歩けているのに 気付いた
嬉しそうに 楽しそうに ワクワクしながら 待ってろよう
テッペイ
今から行くからな!
教会に着いた
リハーサルをしに 少し早めに着いた
高木が居た ミマチが居た! 久しぶり!
すでにリハをしていた。
いいね〜
二人のリハが終り
俺もリハをした
もうギター弾いても泣かない 自分が居た
泣いてたまるか そもそもなんで泣く
唄うのに泣いたら だいなしだ
だいなしになんか 誰がするか
こんなに嬉しい気持ちを 真っすぐ唄うぞ
そう思った
そうこうしているうちに アキちゃんとモモちゃんとゴリが現れた みんな今日、披露宴で演奏するんだ
リハが終わり ひとまず会場を出た
いよいよか〜 伸びをした
テッペルと俺は中学からの同級生だ 中学の時、一緒に野球部に入って野球をした 高校の時も、一緒に野球部で野球をした 高校の途中からバンドも一緒に組んだ 高校卒業してから更に一緒にバンドを組んだ 音楽聞きながら音楽で語りながら 「この曲、最高だよ」とか言いながら 毎日一緒に遊んでいた
そんな時にトモッカとも知り合った
そんな時に羽田とも知り合った ノリアキとも知り合った チンとも知り合った 高木、ももちゃん、アキちゃん、ゴリ、そしてペー ショウゴ、和泉、そしてアボルくんとも知り合った
みんなみんな結婚式にかけつけて来た
そんな俺の大切な友達の二人が 10年以上恋人同士だったそんな二人が 結婚するのは ある意味 俺の青春にもやっとケリがつくようで 祝う他に何にもない程 おめでとう
野球部の 細川、小林、嶋田、鴻巣も かけつけて 懐かしいはずの顔、顔、顔、顔が リアルにここにあった
教会での結婚式 ただでさえ教会はステンドグラスがあるのに 涙が出てしまい 目の前メチャクチャキラキラ光っているじゃね〜か コノヤロ〜
神聖なる時
メチャクチャキラキラ光っているじゃね〜か
かっこいいぞテッペル 奇麗だぞトモッカ
赤いジュウタン 花びらが舞い
教会の横のレストランでの披露宴が始まった
音楽があふれていた披露宴 愛情があふれていた披露宴 仲間たちであふれていた披露宴
俺はほとんど何にも食べれなかった だが 心は満腹だった
緊張してた
仲間達が演奏した後 追い打ちをかけるように 俺は最後に唄う事になっていた
2曲唄う事になっていた
それは自分の為でもあった
テッペルも自分自身を見たガッタ トモッカも自分自身を見たガッタ みんな自分自身を見たガッタ
みんな自分自身を持っていた みんな自分自身を捜してた みんな自分自身を無くしていた みんな自分自身を保っていた みんな自分自身を壊してた みんな自分自身をけなしてた それでもみんな自分自身を愛していた
だから互いに会うのが照れくさく だけど会うだけで言葉は必要なくなり 笑顔が産まれる
そんな友達の前で
バンド解散してから 一緒に演じていなかったテッペルと 10年ぶりに一緒にやった
テッペルがエレキギター弾いて 俺はマイクを持って 俺たちにとって大好きな曲をやった
演奏の前に
祝辞を述べた
「久しぶりに二人で一緒にやりたいと思います。」 と言った
俺たちを狂わせる拍手が起きた
「テッペルくん準備は良いかい? トモッカちゃん少しテッペルくんを借りるよ」
テッペルのギターが語りはじめた 俺は目をつぶって息を吸った
唄いだす以外 何にもない
この瞬間が いとも簡単にやってきやがるこの瞬間に 感謝する瞬間もない程、勝手に口が動いていた
テッペルのギターが その情景を映し出していたんだ
「夜の散歩道をしないかね」詩・曲:忌野清志郎
窓に君の影が揺れるのが見えたから 僕は口笛にいつもの唄を吹く
奇麗な月だよ 出ておいでよ
今夜も二人で歩かないか
窓を開けて君の ためらうような声が 僕の名前呼んで何かささやいてる
奇麗な月だよ 出ておいでよ
今夜も二人で歩かないか
今夜も二人で
あ る か な い か
二人でやり終えた後 またも、俺たちを狂わせる拍手を 聞いているのかいないのか おかまいなしに俺たちは握手した
そしてテッペイとの時間がおわり 俺は一人になってしまった
テッペイとは 全然昔の友達という感覚がない事 今もこれからも刺激し合える 俺を見てて欲しくて互いに見守ってあげられる 友達であることをしゃべった
ギターを指で弾きながら 改めてテッペイが自分の中で大きな存在だった事に 気付いた事を伝えながら、そっと唄に入った
「乾杯」詩:曲 長渕剛
固い絆に思いをよせて 語り尽くせぬ青春の日々
時には傷つき 時には喜び 肩を叩き合った あの日
あれからどれくらい たったのだろう 沈む夕日をいくつ数えたろう
故郷の友は今でも君の 心の中に居ますか
乾杯 今 君は人生の大きな大きな舞台に立ち 遥か長い道のりを歩きはじめた
君に幸せあれ
明日の光を体に浴びて 振り返らずに そのまま行けばよい
風に吹かれても 雨に打たれても 信じた愛に背を向けるな
乾杯 今 君は人生の大きな大きな舞台に立ち 遥か長い道のりを歩きはじめた
君に幸せあれ
乾杯 今 君は人生の大きな大きな舞台に立ち 遥か長い道のりを歩きはじめた
君に幸せあれ
君に 幸せ
あれ
「固い絆に」って唄いはじめた時 ドッと湧き起きた声で あっ、これで良かったって思った
だれもが二人を祝いたい ただそれだけの中で
心を込め 気持ちを放ち オマエに届くよう オマエに届くよう 唄うだけだった
もう 涙は全く出なかった
初めて人前で乾杯を唄った
良い唄じゃね〜かコノヤロウ〜って思った
野球部の仲間から 「田村の長渕を久しぶりに聴いたよ」って言われた
俺も久しぶりだった
この唄の良さを教えてくれたのは この日に近づく日々だった
テッペル トモッカ
おめでとう
2次会が始まるまでの2、3時間 野球部の仲間と過ごした
その時 随分とたくましくなった富田も来た
まだ午後2時を過ぎた頃だった
空きっ腹だった
そして 2次会が始まるまでの2時間ばかしの間に どうやら タンタカタンを沢山飲んでしまったようだ
2次会になれば更に野球部の連中が来る事に なっていた
ヒッさしぶりに野球部の連中と2次会で 会いたかったが
すでに記憶がなくなっていた
2次会の事は殆ど覚えていない
3次会の事も殆ど覚えていない
4次会の事も殆ど覚えていない
どうやって家に帰って来たのかも 全然覚えていない
もっと野球部の仲間と ひっさしぶりにしゃべりたかった
あのデカチンともしゃべりたかった
あのデカチンもいろいろあるらしい
だが どうしようもなく記憶が飛んでいる
それでも 口ずさむのさ
今夜も二人で
あ る か な い か
って
そうすると
あの日の 結婚式の 幸せな時間や 友達の顔や いろんな事が 蘇ってきて
すぐそばに 仲間がいるような気がしてしまうんだ
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