きりんの脱臼
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ここは、なかはられいこ(川柳作家)と村上きわみ(歌人)の
コラボレーションサイトです。(ゲスト有り)
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息とめて桜、吹雪になるところ なかはられいこ
「もうしぶんのない一日にしましょう」
おんな 嬉しそうに 仕上げのプチトマトを弁当箱に押し込んでいる
窓の外はマーブル ぼんやりとかすみのかかった空の うんと上のほうから ひくく唸るような声が
こめかみめがけて じじじじじじじじじじじじっっ
聞こえているほうの耳と 聞こえていないほうの耳を きれいにそろえておく
( ぼ く は 君 が と て も こ わ く て )
おんな うれしそうに蔓で編んだ籠に弁当をいれて サンダルをはき ドアに鍵をかけて
ぼくはせかされるまま原っぱに連れ出される
「ここがいいわね」 と うなずいたおんな いきなり 肩の関節を こくん と はずし
「みていて」
腕はどこまでものびる いつから握りしめていたのか 剃刀の刃を構えて 空を
するすると
裂
( す き ま か ら こ ぼ れ お ち る 花 び ら )
ねえ ごらんよ なんてきれいな空のスリット
さくら わらいながらいっしんに降り注ぎ おんな は いや おんな と ぼく は
( 口中ふかくそそがれる )
( こ れ は マ ナ で す )
( にがい あまい ねむくなってしまう )
( も う ゆ る し て く れ な い か )
これから もうしぶんのない一日 を はじめるところ
裏返すときにおかしな音たてるおまえのからだ こわしてもいいか? 村上きわみ
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