ねぇそうる。望むものはそんなに多くないはずやのに。 どうして1番欲しいものほど守りきれへんのやろう。 それを大切にしたくて。ただ一生懸命なだけやのに。 どうしてそんなものにかぎってこの手を離れていくんやろう。
あたしは別に特別欲しいものがあるわけじゃない。 毎日をただ笑って生きていたい。それだけが願いで。 そのために必要なものを考えたら。それはあんたやった。 あんたがいれば。あたしは自然と笑うことができるから。
ただそれだけの。これ以上ないほどのシンプルなことやったのに。
裏切られてたことがショックで。しばらくそうるを無視してた。 メールの返事は時々するぐらいで。電話にはほとんど出んかった。 そうすればするほど。後からややこしくなるのは分かってたけど。 現実を受け止めきれんくて。逃げるしかなかった。
そうるはあたしが友達から聞いたって知らんはずで。 だから急に変わったあたしの態度を不思議に思ったやろう。 メールや電話の回数は。そうるにしてはありえへんほど増えた。 心配したんかもしれんけど。あたしはそれが余計に許せんかった。
何をぬけぬけと。何をしゃあしゃあと。 あたしが知らんと思って。バレてへんと思って。 なんやねん。どうせあたしなんてどうだってええんやろ。 ちょっと態度変えたぐらいで何を焦ってるねん。あほちゃうか。
悲しみ以上に。腹立たしさに支配されたのはいつからやろう。 涙が出んくなって。なんであたしばっかり裏切られるねんと思った。 なんであたしばっかり苦しんで。あたしばっかり悩まされて。 あたしばっかりしんどい思いをさせられてるんやろう。
もうイヤや。それならあたしだって裏切ってやる。 もう知らん。あんな自分勝手なヤツ。 ちょっとぐらい苦しめばええねん。 あたしの痛み。思い知ればええねん。
裏切られたから裏切る。相手を同じ痛みに貶める。 そんな思考回路にたどり着いた自分を呪いたい。
だって。そんなことしたって何の解決にもならんのに。
投げやりになって。すべてがどうでもよくて。 あたしはこの前。あきらさんに抱かれた。 それが自分を傷つける行為やって分かっててそうした。
仕事帰りに。一緒にごはんを食べに行って。 いつもより酔ってたあきらさんに絡まれて。そうなった。 たぶん本気で抵抗すれば避けられた事態やったけど。 もうどうでもいいやと思って。あんまり抗わんかった。
慣れてるあきらさんは。とても上手やった。 そうるとは違う男の人の体に。ちょっと溺れかけた。 そんな自分が許せんくなって。涙が出た。
なにやってるねん。なんやねん。あたし。
こんなものが欲しいわけじゃないやろ。 こんな自分でいたいわけじゃないやろ。 あほや。ありえへん。どっか頭おかしいんや。
最中に泣いたあたしを見て。あきらさんはさらに興奮してた。 「泣くぐらい気持ちいいんや。」って言って。あたしを貪った。 強引にされるとやばいあたしの性癖。一瞬で見抜いたあきらさんは。 それこそ犯してるぐらいの勢いで。乱暴にあたしを抱いた。
怖くなって。頭の中が真っ白になった。 何がなんだか分からんくなった。自分が壊れると思った。 そうると違って。体温の高いあきらさんの手やった。 いつもあたしを愛してくれるあの手じゃなかった。
あたしの体に。心に。ひとつ傷がついた。 自分でつけた傷。深い傷。消せない傷。
・・・最低。あたしは正真正銘の大バカ女。 ↑あたしはちっともキレイなんかじゃなかった。所詮この程度の人間やった。 |