台所のすみっちょ...風子

 

 

親戚。 - 2004年09月24日(金)

私の母には腹違いの妹がいる。

なんでも高校を卒業すると同時にブラジルに渡り、

苦労しながらもコーヒー農園を初めとする様々な事業で

大成功を収めたのだという。

先日、彼女、つまり私の「異母叔母」さんに当たるその人が、

ある病に倒れて入院してしまった。

自分には先がもう無く身内もいないから、

財産を大好きだった母の長女であるこの私に全額譲渡したい、と

病院のベッドで息も絶え絶えに言っているそうだ、などという空想話が

ある日突然、本当に私の身に起こらないだろうか?と、

不動産屋の口から出る物件価格を聞くたびに、私は毎回思っている。


おしまい。


...

マニュアル。 - 2004年09月22日(水)

バイトの休憩で近くのファミレスへ行ったら、

頼んだタラコスパゲッティーが25分ほどして出てきた。


さして混んでもいないのに、料理を25分も待たせるとは

どういうことなのだろう。

随分待たされたから私の目は吊り上り、鼻の穴はふくらんでいたはずだ。

だが、スパゲッティーを持ってきた店員の顔は

「申し訳ない」ではなく「さあ、召し上がれ〜」という

能天気な感じで、皿をテーブルに置き去っていく時には

「どうぞごゆっくり」などとまで言うのだった。


そんなこと言われなくとも、私はゆっくりするつもりだった。

休憩時間の1時間を全部費やし、食事をしてコーヒーを飲み、

友人にメールを打ち、本まで読むという「ごゆっくりプラン」が

頭の中ではシュミレーションされていたのだ。


こういう時、私はいつも「マニュアルの軽さ」を感じえずにはいられない。

マニュアルは物事を円滑に気持ち良く行う時の、あくまで「指針」で

あって「すべて」ではない。

スパゲッティーを充分待ったので、食べ終わったあとの時間は当然少なくなる。

すると、私のファミレスでの予定が半分は削られてしまう。


だから、この場合店員は

「どうぞごゆっくり」じゃ駄目なのだ。

まず、遅れたことを丁寧に詫びたあと、

「残り少なくなくなってしまいましたが、
お時間の許す限りごゆっくりしていってください」

ぐらい言ってみるのがベストなのではないか・・・と私は思う。


おしまい。





...

発表会。 - 2004年09月19日(日)

今、私が座っている受付の横のホールで

ピアノ発表会が催されている。

2時に開演だったのだが、

遅刻したのか、さっき一組の親子がバタバタとそっちの方に走って行った。

それを見て、私は小さい頃、私が小学校6年生で妹が小学校2年生だった、

ある土曜日の出来事を思い出した。


あの日、私と妹は息を切らしながら、母のあとを追っていた。

妹のピアノの発表会に間に合いそうにもなかったからだった。

普段着ないようなグレーのひらひらワンピースに、これまた履きなれない

黒いエナメルの靴を履いていたから、妹はとても走りにくそうだった。

もちろん、母も私もおしゃれをしていた。

つまり全員が大股で「走る」という運動には不向きで不似合いだったのだ。

にも関わらず、私たちは走り続けた。走って走って会場を目指した。


そしてようやくそこに着いた時、私たちを迎えたのは

菊の花輪と黒と白の幕。そう、誰かの葬式だった。

母が日にちを間違え、妹の発表会は次の週であった。


「せっかく来たから」などと、手を合わせるわけにも、

焼香するわけにもいかず、私達親子3人は

ただただ、その場に立ち尽くしたのだった。


おしまい。










...




My追加

 

 

 

 

INDEX
past  will

Mail