台所のすみっちょ...風子

 

 

BO−BO− - 2004年10月05日(火)

「ねえ、冬なのに脇の毛って剃る?」

昔、友人にそう聞かれたことがある。

「もちろんじゃん!」

私はハッキリ答えた。

それは確か20代半ばの時だった。

見えないところをないがしろにしては、

女もおしまいだ、と当時の私は十分自覚していた。


だが、今、私の脇の下は何気にボーボーである。

決して剃る気がないわけではない。

ただ、風呂に入る度、剃刀を忘れてしまうのだ。

気がついた時はいつもすでに体が泡だらけか、髪が泡だらけ。

そして、ないと分かっているのに、「どこかに・・」と

必ずキョロキョロしてしまい、そのたびに旦那の赤いシェーバーと

目が合ってしまう。


「いっそ、これで、スパっと・・」

何度そう思ったことだろう。

T字型の二枚刃のシェーバーはいかにも良く剃れそうだ。

だが、それに手をかけた瞬間、「女もおしま」どころではなく、

「二度と女に戻れない」ような気もするのである。


女でいることは、忍耐がいる・・と私はここんとこ毎日感じている。


おしまい。



...

浅い眠り - 2004年10月03日(日)

部屋の片隅でルームランプがぼんやりと光っていた。

昨日、深夜3時。今まで深い眠りについていた夫が、

居心地の悪そうな寝返りを打つ。

「どうした?起きちゃった?」

そっと私が声をかける。

「うん、灯りがちょっと眩しいんだ・・気になってさ」

「ごめんね・・」

「おまえ、何起きてんだよ。眠れないの?」

「うん・・眠れないんだ」

「どうした?何か心配ごと?」

「・・・・・・・・・」

夫の優しい問いかけに、私は何も答えられずにいた。

そう、どうしても言えなかったのだ。

昼の12時に起き、昼ごはんを食べ終ったあと、

また2時半から夕方5時まで寝ていたからです、なんて。


おしまい。



...

祭りのあと。 - 2004年10月02日(土)

今、家のすぐ近くに大きなマンションが立っている。

すでに分譲は終っているのだが、改めて塀に取り付けられた看板など見ると、

都心にしては安い価格に広い平米数であることが分かり、

キャンセル待ちに登録でもしとくか・・という話になった。


そして昨日、旦那が早速販売代理店に電話をしてくれた。

「すみません△△△のキャンセル待ちに登録したいんですが」
「でも、今のところキャンセルはありませし、可能性は・・」
「資料だけでも送ってくださいよ」
「それじゃあ、お名前と御住所をお願い致します」
「○○区×××、△ー△ー△です。□□と申します」
「エッ?あの〜、でしたらモデルルームはご覧になりました?」
「いえ、見てません」
「へっ?」

電話口に出た担当者は、モデルルームを見ていないことに非常に

驚いていたそうだ。


そう、家からそのモデルルームは1分強の距離。

なのに、数ヶ月オープンしていたモデルルームに私達は一度も足を運んでいない。

その時はマンションを買うなんて頭になかったしさ〜・・とうな垂れつつ、

旦那が言う。

「どうして、見に行かなかったのかなぁ〜、何度もスケボーやりながら
 前を通ってたのに」

確かに彼はしょっちゅう通っていた。

車の駐車場がそこのすぐ隣で、彼は駐車場までは必ずスケボーで

遊びながら行くのだ。


モデルルームが開く頃に前をシャー。

モデルルームに灯りがともる頃にシャー。

中では、彼と同じような年代の男性が家族の将来を考え、

一家の大黒柱、そしてお父さんとして、

担当者と資金計算などを話しているであろうその前を、

彼はシャーシャーとスケボーで通ってばかりいただけなのである。

ある時なんかは、勢い付いて流れるように走るスケボーの上に直立不動で立ち、

「ど〜も〜僕です」という感じで、受付嬢と目が合ったこともあるそうだ。


朝に夕にスケボーでその前を通る彼の屈託ない姿を思い浮かべる時、

私は何故だか「本当にこの人と結婚して良かった」という気持ちになる。


おしまい。


...




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