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アニキ。 - 2005年06月08日(水) 土曜日の深夜。 飲み物を買いに、歩いて5分ほどのところにある、コンビニに行った。 コーヒー、アップルジュース、牛乳をカゴに入れ、 スポーツドリンクも買っちゃおうかなぁ〜と売り場の前で悩んでいたら、 二人の男性が、私の視界に現れた。 一人は短い茶髪に上下白のスーツを着た、背の低い、芸人のヒロシに どことなく似た、「プチヒロシ」といった感じ。 もう一人はスポーツ刈りの、そのプチヒロシよりさらに背の低い 華奢な男。パシリに使われるために生まれて来たような弱々しい風貌だ。 彼らが上下関係にあることは一目瞭然であった。 「お〜、何でも買っていいぞ!好きなもの買え!」 ガラスケースを前に「プチヒロシ」が威勢良く言う。 「アニキ、マジッすか!?いいんすか?」 「お〜、いいぞ」 「プチヒロシ」の気前の良さに、舎弟のスポーツ刈りはとてもうれしそうで、 ケースの扉を開け、「じゃあこれ、ビールいいっすかね!?」と早速おねだり。 すると、瞬時に「プチヒロシ」の顔が曇り、 「あ〜ん、ビールはダメだ、ビールは。ジュースにしろ」と一喝。 叱られたスポーツ狩りの消沈ぶりは傍で見ていても可哀想であった。 (何でもいいぞ!って言うからビールって言ったんだもん・・・) 彼はきっとそんな気持ちでいっぱいであるハズだった。 そして、側にいた私も思っていた。 そりゃないよ〜アニキ〜〜〜!!と。 おしまい。 ... アウト。 - 2005年06月05日(日) このアパートに住んで最も緊張するのは、 出掛けるときと帰って来たときである。 隣りのSさんと会ってしまうのを私は恐れているのだ。 うっかり、出くわそうもんなら、これが大変。 必ず何か言ってくる。 それは、注意であったり、お願いであったり、命令であったりで、 例えば、ベランダに置きっ放しにしてある弟の荷物を 「あんたのとこのベランダ、ゴミ屋敷みたいだから片付けなさい」とか 「日曜日の朝の草むしりに参加しなさいよ」とか 「これに署名してよ」と、有無も言わさずどっかの党絡みの 運動に署名させられたりとか。 だから最近、私は鍵を閉めたり、開けたりするのがやたら早くなった。 帰って来るときなどは、鍵を早々に取り出し、アパートの 敷地に入る前から、スムーズな開錠のためのイメージトレーニングをしたりする。 彼女に会わないためには、1分1秒が大事なのである。 今日出掛けるときのこと。 外に出ようとして、玄関のドアを開けようとしたら、 すぐそばにSさんのひねた声を聞いた。 慌てて、ドアハンドルから手を離し、耳をドアに当て外の様子を 伺った。明らかにSさんが扉一枚を挟んで外にいる。 どうやら彼女は一人、猫たちに何か語りかけているようであった。 一度くつを脱いで、待機すること10分後、再度耳をドアにつけ、 外の様子をうかがった。今度は音はしない。Sさんはいない様であった。 くつを履き直し、私は勢い良くドアを開けた。 すると、目に飛び込んできたのは、 やっぱりSさんのニヤついた顔。 アウト〜〜〜〜!! おしまい。 ... 反射。 - 2005年06月04日(土) 最寄の駅に一風変わった店がある。 そこは、少し前までただのスナックだったのだが、 最近、「セッションのできる店」として再オープンした。 入り口の黒いボードには蛍光ペンでこう書いてある。 「当店にはカラオケはありません。楽器好きが集い、 セッションを楽しむお店です」 そして、最後の方に「お気軽に!!」とも。 時々、私達夫婦の間でこの店の話が出るのだが、 昔、友人とバンドを組んでいた楽器好きの旦那は言う。 「ふら〜と入って知らない人とテケテケ引けるかよ」 どうやら、いくらお気軽にと言われても、 いきなり他人と・・というのは気が乗らないものらしい。 だからだろうか、そこはいつ覗いてもガラガラである。 今日の夕方も私はその店の前を通った。 すぐに入れるようにという配慮から、入り口のドアは常に開けっ放しだ。 中にエレキギターが何本かとドラムが置いてあるのが見える。 店はやはり今日もガラガラで、マスターとおぼしき男性がいるのみ。 彼はドア背にし、黒いエプロン姿で一人座りギターを弾いていた。 天井からやや斜めに射すオレンジのライトが、マスターの頭に当たる。 マスターは・・ハゲ。 磯野波平ふうなハゲ。 そのツルツルしたてっぺんに当たるライトの光を 私は吸い込まれるように見入った。 そして思うのだった。 あんなに寂しげで悲しげな光の反射は見たことがない・・と。 おしまい。 ...
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