2002年10月10日(木) |
SSS#29「瀬戸口×速水 コネタ」 |
会社で打ち合わせの最中に足が攣りました。 苦悶の表情を押し隠して(笑)話に耳を傾ける神矢。 物凄く真剣に聞いているのだと、好意的に受け取ってもらえました。 ばれなくて良かった…。
週末には頂きもののSSを公開ですv 甘くてちょっと切ないお話なのです。
【betting!】
速水 「瀬戸口さん。ちょっと運試ししてみない?」 瀬戸口 「運試し?くじ引きか何かするのか?」 速水 「そんなとこvえっと…ここに紅茶のパックが二個あります。 外見は全く一緒だけど、一個は売店で買った普通の甘い紅茶。 もう一個は裏マーケットで買った塩味の紅茶です」 瀬戸口 「しおあじって…」 速水 「甘い紅茶だったら当たり。瀬戸口さんが当たりだったら、何でも言うこと聞いてあげるね」 瀬戸口 「…!なんでもっ?」
瀬戸口君、目がきらきらしています。俄然やる気になったようです。 1000年以上も生きてるくせに、ずいぶん浅はかです。
速水 「どっちか好きな方選んでよ」 瀬戸口 「俺はこっちだな」 速水 「じゃあ僕はこっちだね。ふたり同時に確認だよ」 瀬戸口 「はいはい」 速水 「いっせーの、せ!」 瀬戸口 「〜〜〜っ!!!」
思い切り顔を顰める瀬戸口君。あっちゃんは美味しそうに紅茶を飲んでいます。
速水 「はずれちゃったね」 瀬戸口 「…(涙)」 速水 「三回勝負にする?」
瀬戸口のあまりの落ち込みぶりに、速水も少し可哀想になったようです。
瀬戸口 「ほんとに!?」 速水 「うん。…ホントはみんなでやろうと思っていっぱい買ってきたんだ。 でも良く考えたら、塩味に当たった人がかわいそすぎるかと思って」 瀬戸口 「…」(←塩味に当たった人) 速水 「さ。選んで」 瀬戸口 「…よしっ。これだ!」
三回勝負、終了後。
瀬戸口 「……………………」 速水 「瀬戸口さん、そんな落ち込まないでよ。 明日はきっと今日よりいい日になるよ(田辺流ポジティブシンキング)」 瀬戸口 「…そうだな。明日になったら机の中に綺麗に畳まれた紙が入っていて、そこにある言葉通りに 屋上に行くと速水が居て、『瀬戸口さん、僕の事、好きになってくれないかな?だめかな?』なんて 可愛らしく告白してくれるかもしれない…!(具体的)」 速水 「さすがにそれは無いと思うけど(あっさり)とにかく元気出してね」 瀬戸口「あ、ああ…(心で泣く)」
***
瀬戸口「というわけで、俺は紅茶があまり好きじゃなくなったのさ」 来須 「……(どうでもいい)」
Fin ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― たぶんこの場合、瀬戸口の運が悪かったのではなく、速水の運が良かっただけのような…。両方か。
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2002年10月08日(火) |
SSS#28「瀬戸口→速水。ほのぼの」 |
やっと、ファンデその他諸々を秋冬物に変えました。 プラウディアのスティックファンデ。一枚肌になるかどうか荒れ気味な私ではよく判りませんが、たぶん普通程度に状態のいい人なら、きっとそうなると思われます。 化粧崩れが少なく、いい感じの使用感です。
昼休みに同僚の女の子と化粧品を変えたという話をしていると、同じく同僚の男性(年少)が来て、私をじっと観察したのち。
「なるほど。最近の化粧品は良く出来てるんだなあ。 薄暗い所で(昼休みはオフィスは消灯されます)凄く遠くから見れば 美人に見えないこともないかもしれない。 …いや。そうでもないか…」
と率直な感想を述べていました。 ぐーで殴ってやりたくなりました。(※ハメで13コンボぐらい)
【楽園の果実】
授業終了と共に、見えざる争奪戦はすでに幕を開いている。 そう、特に教室の窓際最前列の辺りでは。 瀟洒な姿で泳ぐように教室を横切り、速水を誘おうと瀬戸口は口を開きかける。 それに一瞬機先を制し、少女の声が凛と響いた。
「速水、仕事をしに行くぞ」
「うん!僕も頑張らないとね。…瀬戸口さんごめん、また後でね。」
さっさと教室を出て行く舞に、犬コロの如く付き従う速水を止めようとして、伸ばした手は空しく宙を掻いた。
「〜〜〜面白くない」
憮然とした呟きを聞きとがめて、ののみが瀬戸口の服の裾をひっぱる。
「なにがおもしろくないの?」
「…あっちゃんと芝村が仲良しなのが面白くないの」
思わず正直に答えると、ののみは不思議そうな顔になる。
「どうして?なかよしなのはいいことなのよ。みんななかよしさんがいちばんなの」
「ああ。判ってはいるんだが、俺は心が狭いらしい」
ののみにそんな事を言ってもしょうがない事は判っているのだが、愚痴らずにはいられない。
「ののみ。例えばな、林檎がひとつあるとする」
「りんご?」
「そう林檎。その林檎はすごく美味しそうで誰もが食べたいと思ってる。 しかし、林檎はあんまり小さくて皆で分けることは出来ないんだ。解るか?」
「うん」
「そして、俺はお腹が空いている。もう飢え死にしそうなんだ。 そんな時、その美味そうな林檎を独り占めしたいと思ったら、それは我侭かな?」
「う〜ん。たかちゃんにはののみがおべんとうあげるのよ?」
「…その世界には食べ物はその林檎しかなんだ」
「…たかちゃんはりんごたべないとしんじゃうの?」
「そう」
「たかちゃんがしんじゃったら、ののみはかなしいのよ。あっちゃんもかなしいの。 みんなかなしいの。かなしいのはめーなのよ」
「じゃあ、俺が食べてもいいのかな?」
「…でもね。りんごのいしもたいせつなのよ。 もんだいはだれがりんごをたべたいかじゃないの。 りんごはだれのためにうまれてきたか、なのよ。たべるひとをきめるのはりんごなの。 そして、それはせかいがはじまるそのときからきまっているのよ。 それもせかいのせんたくなの」
「………」
林檎の例え話のはずが突如としてスケールが大きくなる。 だが、ののみのその言葉は瀬戸口の胸を強かに刺した。
「そう、だな。俺は相手の意思を無視しすぎてるかもしれない…」
「だれかをあいするってことは、そのひとのいしをそんちょうするってことなのよ」
ののみは嬉しそうに笑って言った。 瀬戸口はののみの頭を撫でて苦笑する。
「俺が愛について教えられるとはね」
「みんなたりないものをあたえあっていきてるの。 だから、おしえたりおしえられたりするのは、わるいことじゃないのよ」
「そうだな」
「たかちゃんはののみにいろんなものをくれるの。 だから、ののみもたかちゃんにいろいろおしえてあげたいの。 ののみがおしえられることはほんのすこしだけど…。 たかちゃんがたいせつなひとにあげられるものは、きっといっぱいあるはずなのよ。 いろんなものをなくしても、きっとそれだけはずっともっていけるものなの。 だいじなひとをしあわせにできるまほうなの」
「そう、か」
独占欲に支配された醜い魂が洗われるようで、瀬戸口は心からののみに感謝する。 本当に女神のような少女だ。 彼女のように綺麗な心で自分は彼の事を想えるだろうか。 罪に汚れたこの魂では不可能な事なのかもしれない。けれど、努力するだけ無駄ではないだろう。
「本当にありがとうな。ののみの言う通り、俺も大切な人に愛を届けに行くとしよう」
席を立った瀬戸口の背中にののみが声をかける。
「たかちゃん!あいしてるのきもちはかならずとどくのよ。おもいやりがひとをうごかすの。 あっちゃんもたかちゃんのことだいすきよ」
「………、…そうだといいな」
この子はどこまで知っているのだろう。 瀬戸口はちょっと怯えながら、教室を後にした。
Fin ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
オチが少々弱かったか…。 この4者、偉さ(?)で言えばたぶん
速水≧ののみ>舞>>>>>>>>>>>>>>>>>>(中略)>>>瀬戸口
そんな気がして。 ちなみに速水がののみより偉いのはお色気担当もこなす分です。(は?)
2002年10月04日(金) |
あっちゃん、18歳おめでとう。 |
と、いうわけで2002年10月4日、速水厚志さんの18歳の誕生日です。 おめでとう!
ちなみにこの日記を書いているのは10月8日(火)未明です(最低) 月曜日っから騙されましたよ。 「神矢さん、30分ぐらい残業できる?」 「(30分ぐらいならいっか)はい」(←良い子のお返事) …30分じゃなくて5時間30分でした…。 やられた…。やっぱり騙される私がアホなのか…くっ;
あっちゃんの誕生日企画SSは、アップが遅れに遅れ6日になってしまいましたが、お祝いはきちんと当日に致しました。
シラタマさんと神矢ご案内の青山の(←行きつけないくせに/笑)イタリヤンレストランで、アポロニア丼を…いえ、鯛のブイヤベースとワインでお祝いしましたよv ちゃんと(小声ながらも)「あっちゃんおめでとうw」と乾杯しましたv 美人と一緒に可愛いあっちゃんのお誕生日を祝えるなんて、二重の至福でありました。 しかも、シラタマさんから紫という御香と、焼き鹿の子を頂いてしまいましたv 紫を先に楽しみ、鹿の子を後にご馳走になると、美味しさ倍増ですvvv(妄想技能MAX) その後も素敵なバーに連れて行って頂いたり、あっちゃんの誕生日当日が終わるまで楽しく過ごさせて頂きましたv(楽しみすぎ)
お知らせ…といいますか、今日BBSにお返事を付けられれば良かったのですが。 企画SSはお持ち帰りOKでサイト掲載OKです。作者が神矢である事を明記して頂ければ結構ですので。 というか、持ち帰っていただけるだけでも嬉しいのに、掲載して頂けるなんて申し訳ないような…でも凄く嬉しいです。 健気な(失笑)瀬戸口クンをよろしくお願いしますv
2002年10月03日(木) |
SSS#27「瀬戸口×速水 恋人未満・明るい雰囲気」 |
【Give and Take】
「師匠〜、女の子にもてる方法教えてくださいよ!」 「いいぜ。貸し1だな」
毎度聞きなれた滝川と瀬戸口との会話を聞きながら、速水はふと思った。
(貸し1ねえ…。 そういえば茜が森さんの秘密を教えてもらってたときも、『貸し1』って 言われてたっけ。口癖なのかな)
「速水ー、お前も一緒に聞けよ。 特別講義だってよ」
嬉しそうな滝川の声に苦笑する。 速水と視線が合うと、瀬戸口はにっこりと優しそうに微笑んだ。
「……」
思わず赤面してしまう。 目を逸らした速水の方へと、瀬戸口は笑顔のままで近寄ってきた。
「どうした?ほら、愛の伝道師の匠の技を特別にレクチャーしてやるぞ」 「僕はいいってば。 そうだ。それより…瀬戸口さん」 「ん?」 「後で仕事付き合ってくれないかな。 誘導技能が欲しいんだけど、上手くいかなくて」 「可愛い俺のバンビちゃんの頼みを断れないが…タダって訳にもいかないな」
(貸し1って言われるのかな?)
黒目がちな目を向ける速水に、瀬戸口は悪戯っ子のような笑顔になる。
「キス30回でどうだ?」 「………はぁ!?」
大きな目をまんまるに見開いて、速水は素っ頓狂な叫び声を上げた。
「何それ!なんで僕の時だけそんな…。 っていうか、何その数!」 「ははは、いい提案だろv」 「どこが!僕、嫌だからね!!」 「誘導技能欲しいんじゃなかったのかい?」 「ぐ…」
思わず言葉に詰まって拳を握り締める。 その前に立つ男は、飽くまでも爽やかに笑っていた。
「じゃ、1回前払いだな。さ、どうぞ」 「ま、前払いって…」 「初回ってことでほっぺにちゅうに負けておいてやるぞ」
身を屈めて、はい、と頬を寄せる青年に、速水は口をへの字にする。 動く気配のない彼に、瀬戸口はぱちりと片目を瞑ってみせた。
「ほっぺちゅーも出来ない?やっぱりお子様だねえ」 「な!僕だってそれぐらい出来るよ!!」 「なら、どうぞ?」 「……」
新進気鋭のエースパイロットでもやっぱりお子様らしく、瀬戸口の誘導にあっさり引っ掛る。 いや、もしかしたら、これこそが誘導技能の真骨頂なのかもしれない。 引っ込みがつかなくなった速水は、瀬戸口の方へと顔を近づけ…。
かぷり。
「…っ!?」
今度は瀬戸口が目を見開く番だった。 首すじにぱくっと噛み付いた速水は、パッと離れて得意げに笑う。
「えへへ、びっくりしたでしょ。 あんまり僕の事からかってばかりいるから、お仕置きだよ」 「……」 「前払いしたからね。放課後になったら、ちゃんと教えてね。約束だよ」
出会ってより一ヶ月。初めて瀬戸口を負かした速水はご機嫌で去っていく。 瀬戸口は中腰になったまま固まり、首だけを動かしてその後ろ姿を見送った。
(…速水。「噛み付く」ってキスよりも色んな意味でヤラシイんだが…。 あの様子じゃ判ってなさそうだな…)
滝川は、不幸にも一連の出来事をすべて目撃してしまった。 彼は基本的には善良な少年で、しかも色事の師匠である瀬戸口を尊敬してもいたので、瀬戸口がなぜか微妙に腰を引いたまま動けずにいる理由をわざわざ追求したりはしなかったのである。
Fin
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ぽややんでも最強。それがあっちゃん。 基本的には大人だけど、あっちゃんには勝てない。それが瀬戸口さん。
いよいよ明日があっちゃんの誕生日です。 もはや決定的に間に合わなさそうなので、こうなったら納得のいく物にしようと思います。週末にアップ出来ましたらご喝采☆
2002年10月01日(火) |
SSS#26「瀬戸口×速水 ダーク」 |
台風…凄かったですね。なんでも戦後最大だそうで。 幸い部長が「これから台風酷くなるみたいだから、女の人たちは早く帰ったほうがいい」と発言して下さったので、終業の30分前に女の子はみんな帰りました。 残った人たちはどうなったんでしょう。 みんな泊まったのかなあ…。あんな半端じゃなくごちゃごちゃした所に。 人間が寝られるような所じゃないと思うが。 でも、会社に住んでるんじゃないかと思うほどいつも遅くまで残業してる人も何人か居ます。 皆タフですねえ…。
水曜、木曜と頑張ってみようかと思っています。 それでも間に合わない可能性大。ごめん、あっちゃん。
【crystal cage】
話をしていただけだった。 それなのに、来須と速水との間に身体を割り込ませた瀬戸口は、氷のような目をしていた。 「帰るぞ」と、一言。 速水の手を掴み、引き摺るように連れ出した。
「痛いよ、瀬戸口さん…」
速水の言葉も無視して、瀬戸口はどんどん歩いていく。 いつもは歩幅を合わせてくれるのに、今は速水は小走りになっていた。 通行人がみんな振り返って見ている。 息を切らし顔を歪める小柄な少年と、平気そうな顔をして肩で風を切って歩く青年と。 でもそのポーカーフェイスが辛い顔を隠すためのものだと知っているから、速水は泣きそうになっていた。 折角大好きな瀬戸口と一緒の帰り道なのに、少しも楽しくない。
「瀬戸口さん!」
何度目かの呼びかけに、瀬戸口はようやっとちらりと速水を振り返った。 その事に少しだけ安堵した表情に向かって投げつけられる、冷ややかな声。
「どうせお前には俺ひとりって訳じゃないだろうからな」
酷い言葉に立ち竦む。 けれど、ぐんと引かれて肩が外れそうになった。 瀬戸口は再び口を噤んでしまった、 そのまま、どれくらい歩いただろうか。
「加藤がさ…羨ましい」
瀬戸口がぽつりと口を開いた。 いつの間にか、人通りは無くなっていた。 瀬戸口が立ち止まるのに連れ、速水も足を止める。 見上げる青年の横顔は、沈痛な面持ちだった。
「狩谷と加藤見てると、羨ましくなってくる」 「……」 「狩谷みたいに、お前が半身不随になったらどうだろうって考えるんだ」 「…」 「そしたら、俺がずっと面倒みてやるのに。一生側に居てやるのに。 それでお前が、俺なしじゃ一日も生きられないようになったら幸せなのにって…。 そんなこと、時々考えたりする」 「……………」 「気持ち悪いか?それとも怖い?俺の事………嫌いになった?」
血を吐くようにそう言うと、瀬戸口は壊れ物を扱うようにそっと速水の手を離し、向き直った。 そして、悲しい顔のままで速水を抱き締める。 逃げ出そうとはしない温もりに、心底安堵した。 速水の顔は制服の胸に埋もれて瀬戸口からは見えない。 柔らかく響く高めの声が、胸元で響く。 くぐもった声。
「じゃあ僕、歩けなくなる」 「……?」 「歩けなくなったら…瀬戸口さん、ずっと側に居てくれるんでしょう? なら僕、歩けなくなっていい」 「速水…」 「手も足も、僕、なんにもいらないよ? 側に居てくれる?好きでいてくれる?」 「速水、ごめん」 「脊髄のところ壊したら、動かなくなるよ。 そうしていいからね」 「ごめん、俺が悪かった」 「瀬戸口さんになら、僕何されても平気だよ。 …僕の事、どんな風にしてもいいからね。 好きでいてね」 「やめろ!……変な事言ってすまなかった。何も酷い事しないから」 「お願いだから…飽きた顔をしないでね…」
震える手で瀬戸口の上着の胸を掴んで、握り締める。 細い肩を震わせ、速水は今にも泣いてしまいそうだった。 華奢な身体を折れそうなほど強く抱き締めて、瀬戸口は唇を噛む。 速水は強い。誰よりも強くてどんなに傷ついても何度でも立ち上がるだけの力がある。 でもその強さの中に、薄刃の通る隙間ほどの小さな柔らかい部分がある事を瀬戸口は知っていた。 自分の言葉が、狙い違わずそこを傷つけたことも。 速水はいつだって万難を排して立ち上がれる。飛び発てる。 誰かひとりでもいいから、ほんの僅かの本物の愛情を注いでくれる人が居たらならば。 それさえ失ったなら、速水は生きながら壊れてしまうだろう。
―――『速水が歩けなくなったら側に居られるのに』?
(なら、僕が歩けるなら? いつか、僕の側から居なくなっちゃうの?)
その可能性に気付いて青褪めた速水は、瀬戸口にただ必死にしがみ付くしかすべがない。 どうしたら捨てずにいて貰えるのか判らない。 いっそ本当に歩けなくなってしまおうかと、調理室にあるアイスピックを思う。 無意識に何かを掴むように空を掻いたその手を、大きな手が包み込んだ。
「飽きたりなんかしないよ…そうじゃない…」
必死に自分を求めるような仕草をする速水に、暗い喜びが湧き上がる。 それを見ない振りをして、瀬戸口は痛みを堪える顔をした。
「お前が、いつか俺の腕の中から飛んで行ってしまうような気がして…」
過去にも未来にも、一歩も進む事の出来ない瀬戸口を置いて。 もっと明るい未来へ。例えば…輝ける彼女の手を取って。 …そんな事は、決してさせないけれど。
こうして少しずつ少しずつ、速水に不安を与える。 瀬戸口が居ないと寂しくて、苦しくて、生きていけないと思い込むように。 本当は、速水は瀬戸口なしでも幸せになる事が出来るのだ。彼を心から愛してくれる人なんて、幾らでもいるのだから。 速水無しには正気を保てないのは、瀬戸口のほうだった。
けれど、『本当』なんてどうでもいい。 速水が、瀬戸口を愛していると思い込んでいる間は、瀬戸口は満たされるのだから。
「僕がどこかに行くわけないじゃない。 瀬戸口さんが…好きなのに。 瀬戸口さんの腕の中以外、幸せになれる所なんてないのに」
想いを込めて見上げてくる速水の言葉が、胸を甘く切なく締め付ける。 男はこの上なく優しく慈愛に満ちた微笑みで、少年を抱いて口付けを贈る。 その裏の闇の深さを識らず、ただ優しく暖かい腕に心から安堵して、速水は目を閉じた。
Fin ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ダークのご依頼。裏で一本考えている過程で出てきた、おまけみたいなものです。 本編には入れられなさそうだったので、これはこれで一本にしてみました。 酷い瀬戸口さんて、意外と書きやすいかもしれません。 基本的に弱い人なので。…弱いからこそ、至上に優しくもなれるし、酷い人にもなれる。その分かれ道は…小さな違いなんでしょうね。
2002年09月30日(月) |
10月4日が何の日かご存知でしょうか。 |
A.あっちゃんの誕生日です。
…いかん。いけませんよ、奥さん(誰?) 今週の金曜日ですよ。これが週末はさんで月曜日とかなら兎も角…。 いや、これでもトップ絵変えようとか何とか色々野望はあったのです。
「夢見るだけなら只だ」
全く。 描けないし。書けないし。 このままじゃ、折角の速水さんの誕生日だというのに、サイトで何も出来なくなってしまいそうで…(涙) あ。でもお祝いはするつもりです。 最愛のシラタマさんと、速水の誕生日を祝して食事(飲み)に行きましょうとv ちゃんとケーキも食べますよvvv楽しみ〜w
…って、管理人としてダメダメだ(笑)
金曜日までにSSかお絵かきか、どちらかの神様がおりてきますように〜(ぱん!ぱん!)
そういえば、最近の昼ドラで「真珠婦人」というのをやっていたようですね。 金曜日にダイジェスト版(?)をやっていたようで…ビデオで見せられました。 見事に無駄な時間を費やしてしまいました。
全体的な感想。 ヒロインの恋人である青年。奴のあまりの腰抜けぶりに脱力しました。 見てるだけでストレス溜まりそうです。 以下、妹と私の会話。
私「この…最初の『2年間待ってください。必ず綺麗な身体で貴方の所に帰ってきますから。』とかいうシーンがあるじゃない」 妹「うん」 私「これさあ。瑠璃子さんだけがこういうのおかしくない?ここでこの…直也だっけ?これが『判りました。僕も綺麗な身体であなたの事を待ちましょう!』ぐらい言う程度の気概(?)が欲しいよねー」 妹「…言いたいことは判る。でも相当いらない」 私「あ、うん。確かにいらないね」
退屈しながらもなぜか最後まで見てしまい、果てしない疲労感だけが残りました。 なんでつまらないと思いながらも見てしまうのだろう。これが昼ドラマジック?
今読み返してみたら、神矢としては珍しく毒舌ですね。 ストレスでも溜まってるのでしょうか(笑) ああもう、頼むよ!神様仏様瀬戸口さま!(…)どうか私にあっちゃんを可愛く書く(描く)力を恵んでください〜!!(切羽詰ってます)
2002年09月29日(日) |
SSS#25「瀬戸口×速水 ラブラブ」 |
誰も気付かないかもしれませんが(笑)日記のタイトル変えてみました。
今日、うっかり009を見てしまいました。 昔も今も殆ど見たことなかったのですが、私はどうやら大きな勘違いをしていたようです。 私は009(主人公)がヒーローで、003(紅一点)がヒロインなんだと思い込んでいたのですが…。
違いました。 今日の放送を見る限り。
009(主人公)がヒロインで 002(最速)がヒーローでした。
衝撃の事実。 ラスボス(?)との戦い(in宇宙)で大気圏外に放り出された009を救うために002がひとり追いかけるのですが。 002正直カッコ良かったです。惚れそうです。スタリオン(幻水)に似てるとか思っていた自分を心から反省しました。
ていうか。ほんとに彼らが心中(違)して終わりなんですか?あれ、最終回じゃないですよね? あんな大きなお嬢ちゃんたちが喜びそうなラストでいいんでしょうか。 いいのか。(納得するな) なにかサイボーグ009を大幅に勘違いしたまま、私の人生は進んでいきそうです。
009は置いておいて、ここはガンパレサイトです(笑) ここで小話をひとつ。
【The Secret SweetHeart】
「あーあ。彼女の手作り弁当が欲しいよなあ」
ぼやきながら、親友は購買のヤキソバパンに齧りついた。 そんな彼をぽやんとした笑顔で見遣り、速水は笑ってサンドイッチを一切れ差し出す。
「まだ諦めてなかったんだ」 「お前…そりゃひでーよ」
柔らかい声音で言われた、存外厳しい言葉に滝川はぐったりと机に頭を沈めた。 でもしっかりサンドイッチは受け取る。 もそもそと食べると、卵とマヨネーズの絶妙な旨味が口の中に広がった。
「お前が女ならなあ…」
あまり冗談でも無さそうな目付きでそう言われ、速水は冗談と流しつつも身体を退く。 滝川は再び机に突っ伏した。
「ほんとに彼女欲しいなあ」 「そう言う割に、滝川ってあまり女の子と話しないよねえ」
くすくすと笑いを零しながら、速水は次のサンドイッチを口に運んだ。 滝川はそんな速水を恨めしそうに見上げる。
「どーせ俺は、お前みたいに女と仲良くねえよ。 でもさ、うちの小隊の女ってアクが強すぎねえか? やっぱ…女子高の子とかさあ」
夢見がちに自分達とは少々距離のある女の子たちの話をする滝川に、速水は本当に親友が彼女を欲しがっているのだろうかと疑った。恋に恋する、というわけでもあるまいが、滝川は存外「彼女が欲しい」と口にする事それ自体を楽しんでいるのかもしれない。
「お前は彼女欲しくねえの?」
突然こちらに振られて吃驚する。
「僕は…そんなに切実には…」
ぽやーっとたんぽぽの綿毛のようなふわふわした笑顔で答えられ、滝川は心底脱力したようだった。
「付き合いわりーな」 「うーん」
困ったように微笑む少年を眺めつつ、滝川の手が次のパンの袋を破った。 ばり。という音と共に、合成バターの香りが辺りに広がる。
「そういえば最近師匠もなあ…」 「!…瀬戸口さんがどうかした?」
口に運びかけたサンドイッチを下ろし、速水は大きな空色の瞳を発言者に向ける。 滝川は彼の顔を見ず、パンの中から合成とうもろこしを除去する作業に真剣だった。
「あんまり女の子といないよなあ。 前は暇さえあれば女の子と話してたし、デートに行くんだって消えるのなんて しょっちゅうだったのに」 「……」 「こないだもさ、女の子にラブレター貰ってて…わっ!」
速水が握り締めたパックから噴水のように紅茶が飛び出し、滝川は言葉を切る。 幸い被害は大した物ではなく、机の上に小さな池が出来たぐらいだった。
「ごめん。…それで?」
速水は雑巾でそれを拭いながら、先を促がす。 滝川は、何となく速水の目付きが怖いと思いながらも、それに気付かぬ振りをした。
「ああ。師匠がラブレター貰ってたんだけど。 驚くなよ。突き返してたんだよ!」 「突き返し…てたの?」 「あ、いや…。言い方悪かったな。 突き返すっていうか…とにかく受け取り拒否してたんだ。 なんか謝ってるみたいだったけど」 「…そう」 「すげー可愛い女の子でさ。 こう…髪が長くて、清楚っていうか、人形みたいっていうか。 とにかくほんと可愛かったのに、勿体無いよなあ」 「そう…だね」 「俺なら即OKなのにな…。 師匠って別に特別に彼女がいるわけでもないみたいなのに、 どうして断ったのかな。 あ!ひょっとして特別に好きなヤツが出来たとか、そういうことかな!?」 「!」
滝川の言葉に、速水はびくっと肩を震わせる。 とうもろこしを纏めてビニール袋に入れ終えた滝川は、そんな速水の様子に驚いて顔を上げた。
「速水…どうした?なんか、顔赤いけど。具合でも悪いのか?」 「な、なんでもないよ! あ。僕、雑巾洗って来るから、適当に食べてて。じゃあ」 「おい、速水ー?」
ばたばたと教室から出て行く速水を見送って、滝川は首を傾げた。
***
「瀬戸口さん!」
指揮車の中で珍しく整備作業に励んでいた瀬戸口は、愛らしい声に呼ばれインカムを外した。 車のドアが外側から開き、ふわふわの髪が覗く。
「厚志か。どうした?」 「あのね。今日一緒に帰らない?」 「珍しいな。OK、すぐに片付ける」
いつも深夜まで仕事をしている速水と一緒に帰れる機会は稀で、瀬戸口は喜んで提案を受け入れた。 指揮車から下り立つと、小柄な速水が瀬戸口を見上げてくる。
「待たせたな。じゃあ帰ろうか」
優しい声で促がすと、速水はほんのり頬を染めてこっくりと頷いた。
昼間あった出来事、ニュースの事、見たい映画の事。 ほんとうにどうでもいいような事を話しながら帰る道のりは、なぜかとても楽しかった。 話題が一瞬途切れた時に、速水が瀬戸口を見上げる。
「瀬戸口さん…あの………手、つないでもいい?」
消え入りそうな、声。 でも瀬戸口の耳にははっきりと届く、声。 瀬戸口は返事をする代わりに手を伸ばし、細い指に自分の指を絡める。 引き寄せて、歩き出す。 暖かい手のひら。 コンパスの分、速水が少し遅れる。 それに気付いて、瀬戸口は歩調を緩めた。
「瀬戸口さん、ラブレター受け取らなかったんだって?」
揶うような口調を装った問いに、瀬戸口は苦笑する。
「仕方がないだろう。好きな奴がいるのに、受け取れないじゃないか」 「好きな人…」 「そ。一番大好きで大事で愛してる人」 「…だれ?」 「だれだろうねえ」
瀬戸口はとぼけて空を見上げる。 速水は微笑んでそんな彼に寄りかかった。 歩き難いだろうと苦情を言う青年の声は、けれど極上に甘い。
最初から完敗なんだから、せめて告白ぐらいはと。 瀬戸口はこの恋を秘密にする。 でもいつまで耐えられるのだろうか、俺は。 柔らかな小さい手のひらの感触と、甘い髪の香りに眩暈がする。 そんな彼を嘲笑するように、ふたつの月は晧々と夜空に冴え渡っていた…。
Fin ―――――――――――――――――――――――――――――――――― これで恋人未満だというから始末に終えない。 ラブラブバカップル、ここに極まる。
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