【シュークリーム作成日誌】

2002年12月10日(火) SSS#38「瀬戸口×速水。大人風味」

絶対一週間じゃ書きあがらないだろうなあと思っていた「黒つぐみ」の後編。予想どおりまだ2/3ぐらいしか出来上がっていません。前編と同じぐらいの長丁場です。
今週末の更新を予定しておりますが、はて、どうなるでしょうね(笑)

更新してなくて寂しいので、短いですがお話をひとつ。













夜中に目が覚める。その事が、とても怖かった。




[a sleeping pill]




目が覚める、ということは何かの気配に気付いたということ。
だから、夜中に目が覚めたら逃げなくてはならない。
『敵』から。
それは化物に怯え、それを退治しようとする人間だったり、裏切りを責める同胞だったりした。
夜中に目が覚めるのが、瀬戸口は怖かった。





午前3時。
薄紫の猫の目が暗闇に光る。

(真夜中に目を覚ましてしまった)

眠りの浅い自分を悔やみつつ、瀬戸口は身を起こそうとする。
と、小さな唸り声がした。子猫のような、声。

(…そうだった)

ここは荒野でも森でもなかった。
速水の家の、速水の寝室の、速水のベッドの中。
逃げる必要は無い。
カーテンの隙間から月光が差し込んでいる。
傍らに目を向けると、濡羽色の髪が濡れたように輝いていた。
ほんのりと上気した、白い頬。
瀬戸口が動いたせいでずれてしまった布団からのぞく、艶やかな肩が月の明りを白く反射している。

夜の中も、君がいるなら。

夢ではないという証拠に、そっと覆い被さりキスをした。
熟睡していた速水は、迷惑そうに小さく身動きする。
唇に、瞼に、頬に、耳に、首筋に。
何度も何度もキスをしているうちに、速水はとうとう目を覚ましてしまった。

「せと……?なにして…」
「うん。いいから」
「いやぁ……ねむいよう……」
「ん、寝てて良いから…」

自分でも無茶な事を言っているなと可笑しくなる。
眠気を振り払おうとしているのか、瀬戸口を振り払おうとしているのか。
半分眠りながらもわたわたと手足を動かす速水が、とても可愛らしい。
顔を覗き込んだら、睡眠を邪魔され不機嫌らしく、嫌そうな顔で瀬戸口を見返してくる。
他の人間は知らないだろうが、速水の嫌そうな顔というのはそれはそれは……いいのだ。
そんな事を考えている事が知れたら、恐らくグーで殴られるだろう。
瀬戸口は速水の表情に見惚れつつも、手の動きは緩めない。

「んっ、やだ…今日はもう…寝る…」
「寝てて良いってば」
「ならやめてよ…こんな…寝られるわけ……ふぁ………あ…ん……」

腕の中の小さな生き物が、だんだん熱を帯びてくる。

「熱…っ…」

その熱が、心もこの身も暖める。
夜の中、ふたりで。掠れた声も、夜に溶けて。


***


細く窓を開けて煙草の煙を逃がしながら、瀬戸口は白む夜明けを眺めていた。
ベッドの中の恋人に語りかける。

「夜中に目が覚めるのが、怖くてさ…。
 でも厚志と一緒に寝るようになってから、平気になった」
「へえ…そう。僕は君が夜中に目を覚ますのが怖くなったよ…」
「怖いくらいに気持ち良かったとか…?」
「バカ!…もう、今日は誰かのせいで極楽トンボ章決定だよ…」
「朝になってもまだ腰が立たないだろうからなあ」
「いちいち言うな!瀬戸口の変態!!」

可愛い外見のくせに存外口が悪いと、瀬戸口はこっそり笑う。
真夜中はもう怖くない。
君といれば、暗闇の中も走り抜けられる。




Fin
―――――――――――――――――――――――――――――――――

瀬戸口に無理矢理起されて嫌がるあっちゃんが書きたかっただけです。
ええと…可愛い子が嫌がる姿ってちょっといいですよねv(変態)


↑という方はスイッチをどうぞ☆



2002年12月09日(月) 師走

私のところに週に一回届くメルマガの一節。

> いやあ、12月になりましたね!今年もそろそろ終わりですね!
> 年の瀬も近づきつつあり、街の中には沢山の師匠が走っていますよ。

これを読んだ瞬間に、たくさんの小さな瀬戸口が速水とのクリスマス&お正月の準備のために、ばたばたとそこら中を走り回っている姿を思い浮かべてしまいました。
うーん可愛いv(←は?)


12月に入って、私もやたらめったらと忙しくなりました。
何…。毎年年末ってこんなに忙しかったっけ…。
忘年会だけで6回は予定。いえ、終わったのもあるからもっとか…。
私はなんでそのうち三つも幹事をやっているのか。訳が判りません。
みんなの下っ端、神矢。


そういえば今日はちょっとドッキリすることが。
長文を打つ仕事の最中に、隣の席の人に言われた一言。

「神矢さん、ブラインドタッチ凄いね。全然手元見ないし、速いし」
「いやーそれほどでもv」
「どうやって練習したの?ソフトとか使って?」
「(ギクリ;)い、いや別に…。ほら、仕上表とか特記仕様書とか書いてると文章打つの多いから自然に出来るように…」
「へー、そうなんだ。私も仕上表書いてるけど出来ないなあ…」
「ははは…」

言えない。
ここ一年余り、サルのように女性向け小説を書きなぐってきた賜物だとは言えない…;

↑同感の方はスイッチを。


でも、私にとってはタイピングソフトより効きました。>セトハヤ



2002年12月04日(水) SSS#37「瀬戸口→水色速水 ギャグ5」

今日、駅の階段で転びました。
今年に入って、たぶん6回目ぐらいだと思います。自分がひとより転びやすいのかどうかは判りません。
でも、降りている時に膝から転んだのは初めてです。コケた瞬間に、そのまま下まで転がり落ちるかと思ってびっくりしました。
実際にはそのまま階段にべたん!と正座するように転んだので落ちませんでした。
足首と膝を階段の角にぶつけてしまいましたが…;
しかしあれですね。セーラー服の女子高生だった頃は、間髪いれずに回りの人が助けてくれたものですが、今日は誰も助けてはくれませんでした。
不貞腐れた神矢は、月日の流れって残酷だね…などと遠い目をしつつ暫く座り込んでいましたよ(←邪魔です)。
が、ややあってそれはそれは綺麗なお嬢さんが助けてくれたので、世の中捨てたもんじゃないなと思い直したり。
我ながら調子いいですね(笑)




【瀬戸口隆之受難の日 5】



「勝吏様。Dancing Dollの出撃準備が整いましたわ」
「ご苦労だった。幻獣側の情報を出してくれ」
「はい。
 幻獣側勢力
 スキュラ36体(←!?)、キメラ21体、キタカゼゾンビ8体、ナーガ4体、ヒトウバン11体、
 ゴブリン103体。以上です」
「ふむ…ちなみに舞踏機の戦力情報はどうだ?」
「は…。
 瀬戸口…攻撃力10300
         守備力 25
         回避率 98%
         知能  1232…
         (内訳 歴史:15 生活の知恵:20 女性関係:10
              流行:5 速水のこと:1180 その他:2)
         運    3(←…)
      
         装備 超硬度カトラス
             超硬度カトラス
             六尺フンドシ
         以上です」

「待てコルァ!!」
「瀬戸口、何を怒っている」
「怒るわ、このすっとこどっこいが!!何だフンドシって!?舞踏服がメンテ中だって、ほかに何かあるだろうが!!」
「良く聞け、瀬戸口。フンドシは漢の戦闘服だ!!」
「お…漢の、戦闘服…?」

愕然とする瀬戸口。
その後ろで速水は舞に「すっとこどっこい」の意味について質問していた。
その更に後ろで彼らを眺めながら、善行が傍らの若宮に小さく囁く。

「戦士。貴方ももしかして以前はあんな格好で訓練したのではありませんか?」

若宮は、両手にカトラスを持ったふんどし姿の瀬戸口を見て、力の抜けた笑いを漏らした。

「はい、いいえ司令殿。いくら自分達でもあんなシュールな格好で訓練は致しません」
「そりゃそうですよねえ…」

善行の声は、なにやらしみじみとしていた。
その目の前で、芝村準竜師は芝村的演説を熱弁中である。

「いいか、瀬戸口よ。古来日本人は鯨を獲る時には赤い六尺フンドシを締めて挑んだものだ。
 瀬戸内海はクジラ漁も盛んだったが、また鮫も多く、鮫が自分よりも体長の大きな物は襲わないという習性から…」
「知ってるって!大体ここ陸上だし!鮫いないし!!」
「だがな…スキュラのあの姿はクジラにちょっと似ているとは思わんか?」
「理由になるか!!」

瀬戸口はツッコミに声を嗄らしていたが、準竜師はまるで堪えた様子も無く涼しい顔である。
そんな鉄面皮の準竜師も、己の袖をちょんちょんと引っ張る人物を見てたちまち表情を溶けさせた。

「どうした?厚志…」
「勝吏さん。いくらなんでもあんな格好じゃ瀬戸口さんが可哀想だよ」
「む…」

最愛の恋人にそう言われ、流石に準竜師も渋い顔をする。

「いくら春だからって、フンドシ一枚じゃ風邪引いちゃう」

速水君、そういう問題じゃないから。
しかしやけに横に広がった顔をした男は、速水の優しさに激しく感銘を受けた模様だった。

「厚志…お前は友人想いの優しい子だな。よし、今回だけ特別にウォードレスを用意してやろう」
「わーいv」
「…って今回だけかよ!?」

もはや美少年総崩れで顔を引き攣らせる瀬戸口を他所に、準竜師はてきぱきと指示を出す。
間もなく瀬戸口のもとへ運ばれてきたウォードレスは…。

「…おい」
「どうした瀬戸口。さっさと着替えてぱっぱと戦場に移動してさくっとやっつけて来い」
「普通、舞踏服の代わりっつったら、最低でも武尊とかっ!」
「うるさいな。一体それのどこが不満だと言うんだ」

フンドシに代わって瀬戸口が着せられつつあるウォードレスは、互尊狙撃兵仕様。ご丁寧にインカムまで付いたオペレーターバージョンである。

「一番着慣れてるだろうが」
「アホか!!こんなぺらぺらの装甲でスカウトの真似事が出来るか!」
「案ずるな。絢爛舞踏は被弾しないから絢爛舞踏なのだ」
「戦うのお前じゃないからって…」

再び罵りあいに突入しつつあるふたりを、速水はぽややんと見つめている。
どうでもいいが、速水よ。
蒼天よりも青い髪を風に嬲られるに任せ、襟元を肌蹴たワイルド極まる覚醒バリバリなお姿で、ぽややんとするのは止めて欲しい。
ぽややんな覚醒速水は、やはりぽややんとふたりの間に割って入った。

「あの程度の幻獣、ものの1時間で掃除出来るだろう!?
 つべこべ言わずにとっとと行け!!」
「あのね、瀬戸口さん」
「ならてめえが代わりに戦いやが……なんだいvバンビちゃんvvv」

誰がなんと言おうと、青かろうと黒かろうと速水は速水なのである。
その証拠に、瀬戸口はめろめろだ。
速水は瀬戸口を見上げてにっこりと笑った。
その顔立ちは愛らしいことこの上ない。

「僕、瀬戸口さんのオペレーター姿、好きだな。そのウォードレスが一番似合ってるものv」
「…ほ、ほんと?」

瀬戸口さんしっかり!顔がだらしなくなっていますよ!

「僕、瀬戸口さんのその格好、大好きv」

速水のトドメの一撃で、瀬戸口のやる気は400%にまで跳ね上がった。
頬を染めて口許を緩めながら、カトラスを手に取る。

「俺の可愛いバンビちゃんがそう言うなら仕方ないなv
 おにーさん頑張っちゃうぞvvv」
「うんv頑張ってねw瀬戸口さん」

ふたりの遣り取りを聞いてしまった若宮の口は開きっぱなしになっていた。

「し、司令…」
「なんですか、戦士」
「もしかして、瀬戸口って物凄く…阿呆…」
「しっ!本当の事を言ってはいけません」

神妙な顔で口の前に人差し指を立てる善行に、若宮は慌てて両手で口を塞ぐ。
そんな彼らに気付かず、瀬戸口はウキウキとカトラスを磨いている。
普段の彼は阿呆ではない(はずだ)。ただ…いまや彼の脳細胞の99.999999999%は速水への妄想のためだけに使われている状態だった。





つづく。

―――――――――――――――――――――――――――――――
瀬戸口がどんどんアホになっていく…。ま、いっか♪(待て)


…そんな気がする。



2002年11月30日(土) LOTR

今日ロード・オブ・ザ・リングをやっとこさ見ました。(遅すぎです)
妹が、ハリーポッターよりずっと面白いと激しく宣伝していたので、物凄く期待していたのですが。
うん、展開がスピーディで面白かったです。3時間もあると意識させないし、飽きさせないで。…ラストは「ここで切るか!?」とは思いましたが(笑)
続きものだと言うことは知っていたので、憤ったりはしませんでした(当たり前)


でも私、実は…LOTR見る上で、もうひとつの刷り込みがありまして…(汗)
それは…えっと……ボロレゴです(小声)
尊敬するA.Tさまがボロレゴ好きの方で、そちらを拝見していたので…。

映画見てる最中も「どれ?いつ出てくんの?レゴラス!レゴラス!!」とまあ、そんな感じでした。すでに映画を見る姿勢が完全に間違っています。
実際見たレゴラスは、美青年でよい感じでした。
普段はたおやかな感じ(←日本語わかってますか?神矢さん)なのに、オークとの戦闘では、舞うような身ごなしで攻撃を避けつつ、至近距離からばんばん弓を射る(百発百中)姿が格好良くて…。

でもね、でもね。ボロミアが…。うん、これは役者の問題だから、言ってもどうにもならんのですが………アラゴルンのが美青年でした(失言)
キャラクター的には、ボロミアって人間的な弱さがあって非常に萌えなのですがね。夢見がちで、理想主義者で、でも優しくて(甘い、と言い換えてもよいかも)指輪の誘惑に負けてしまう弱さと、それを悔いる勇気もあって。ううむ、これは内面萌えという奴でしょうか。
あらあらv(←?)

いえ、その辺について追求するのは止めるとしても。
ぶっちゃけ、映画中は、誰がどう見てもボロアラでしたわ。プロポーズ(違)までしてるし。
でも、私はA.Tさんの書かれるボロレゴがとても綺麗で好きなので、しばらくLOTRに関してはボロレゴ好きで行こうと思います…。
……。
何度も言うようですが、私はこの映画を見る姿勢を間違っています。
カップリングとか考える映画じゃないんだってば!
でもレゴラス、可愛いカッコ良いわvvv(←葛藤)



さて、激しくおかしい指輪トークは置いておくとしまして。
書き途中の裏SS。なんでこんなに長いのかと思いましたら、濡れ場が軽く普段のSS一本分ぐらいの長さになっていました。21禁だからって、はしゃぎすぎです。
そして、その4倍近くのその他の部分を書かなくてはいけないことに、今更気付く私。
もう一度に全部出すのは諦めて前後編に分ける事に決めました。それでも長いよ…。はあ、明日はまた学校か…。
抱き締め隊に全然手が回らないです。冬コミまでに!って思ってるのに(涙)





2002年11月27日(水) 愛の嵐

↑何の話かと申しますと、26日。
ガンパレ鍋大会をしましたv

そもそも私とシラタマさんが、仕事の最中に(←…)ちょこちょこと遣り取りしているメールで「寒くなってきましたね。鍋が恋しいですー」「でも鍋ってふたりはちょっと。人数を集めないと」「いっそ鍋大会とか…!」なんて感じのやりとりが発端でした。ほんとにやってしまうとは自分でも驚きです(笑)

例によって殆ど名ホスト(←苗字)シラタマさんにおんぶに抱っこでした;
いつもすみません。と、ありがとうございますw
そして、参加してくださった皆様ありがとうございましたv

鍋大会だったというのに、鍋に関する記憶が殆どありません。美味しそうな海鮮鍋だったのに…しゃべりに夢中で(苦笑)
シラタマさんの玉じゃくし&菜箸捌きがお上手だったということしか…っ。

店員さんに「そろそろ閉店時間なのですが…」と困ったように言われるまで時間を忘れていたぐらいですから、ガンパレトークの盛り上がり具合が判るかと思います。

プレゼントも頂いてしまいました。
シラタマさんには、鹿の子焼きをv 仔鹿じゃありません、念のため。
優しく歯を立てないようにじっくり味わって…って無理でしょう(笑)齧っちゃいましたよ。でもとっても美味しかったです。
藍さんからはバンビちゃんのマグカップと小さなぬいぐるみを。
紫色のバンビですv可愛いw マグは早速会社に持っていきました。しかし、あまりの可愛さに気が散ってなりません(ダメじゃんよ…/笑)
シラタマさんとおそろですしね。

美女&美少女(S.Nさん/←名指し)に囲まれて、幸せ一杯夢一杯な時間でした。
これだからオフ会は辞められませんv
皆様次回もぜひ、お付き合い頂けると嬉しいです。


さて、次は冬コミ後のオフ会のお店を探さねば!(やる気満々)
ガンパレは2日目なので、その後にオフ会を開催したいと思います。
数日中にサイトにきちんと告知を出しますので、参加を希望される方はそちらを参照してくださいませv




そういえば、SSSを再録しようとしたらあまりの数の多さに呆然としました。
30話以上もある…。しょぼいくせに書きすぎ。
とりあえず、赤ずきんちゃんはそっちの再録にいれます。突発SSですしね(苦笑)







2002年11月24日(日) SSS#36「瀬戸口→水色速水 ギャグ4」

テスト受けてきました。
……。
ふぃー。
まあ、過ぎた事は過ぎた事です。うん。






【瀬戸口隆之受難の日 4】






「じゃあ、僕たちは教会を見に行くので、今日は早退させてください。委員長」

花も恥らう美少年に満面の笑みでうきうきとそう言われ、善行は引き攣った微笑みを返した。
正しくは、諦観の笑みである。
教会でも新婚旅行でも、何処へでも好きなだけ行って下さい…と言いかける善行の美声をサイレンが遮った。

101V3、101V3

耳に馴染んだ、けれど今でも背筋を震わせるサイレンと、多目的結晶に送られてくる戦区情報。
出撃である。
反射神経的に直ちに身を翻そうとした善行は、その場にのめってすっ転んだ。
顔面から地面に突っ込み、眼鏡の砕けるパリンパリンという音が景気良く響く。
善行を転ばせた張本人はまだ上官の上着の裾を掴んだままで、潤んだ瞳を向けてきた。

「そんなあ…酷いです、司令。
 僕、今日は勝吏さんと出かけるの、楽しみにしてたのに…」

うるうると目を潤ませて、眩暈がするほど可愛らしい顔で言われたってダメな物はダメだ。
いくら可愛いと言ったって、速水の美貌でスキュラが撃墜出来るわけではない。
が、不可能を可能にするからこそ、速水厚志は芝村厚志なのである。
肉の厚い手のひらが、ぽんと少年の細い肩を叩く。

「案ずるな、厚志。今日は5121小隊の出撃は無い」
「ほんとですか!?」

速水は一瞬顔を輝かせたものの、すぐにしゅんとしてしまう。

「でも、幻獣が実体化するのは止められないですものね。
 僕達が戦わなくちゃ…」
「ふっ、厚志は優しいな…。だが心配は無用だぞ。
 こんな時のためにこそ、奴が居るのだ!」
「奴…って?」
「ふははははは!良くぞ聞いた。
 その名は、天知る地知る、芝村知る!正義の味方なバックダンサー(?)
 ゴージャス☆タンゴとは奴の事だ!!!」

なぜか準竜師の呼び方は「つのだ☆ひろ」と同じ発音である。あの星印は何なのだろうか。
ジャジャーン!というオーケストラの効果音と共に、スポットライトがひとりの男を照らし出す。

「え?え?何???」

何故か恵方に向かって太巻きを食べている最中だった瀬戸口は、突然のスポットライトにびっくりした様子だ。

「絢爛舞踏。厄払いしていないで支度をなさって。どうせ無駄なんですから」

いつの間に居たのか。
準竜師の美貌の副官が、涼しい声で厳しい現実を直視させようとする。

「…え?まさか俺ひとりで出撃…?」
「お。美味そうだな、これ」

色鮮やかな具材たっぷりの美味しそうな太巻きを持ったまま、瀬戸口は呆然とした。
呆然としている間に、太巻きは若宮の胃袋へと消えていく。
更に冷静な声の更紗が追い討ちをかけた。

「ちなみに士魂号西洋型、絢爛舞踏服、共に現在オーバーホール中につき、
 本日はで出撃して頂きます」
…生っ!!?

生って何さ…。
全員の心に謎を残しつつ、瀬戸口はハンガーの方へと連行されていった。





つづく
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
なんだかもう、コメントのしようが無いです。





2002年11月23日(土) SSS#35「瀬戸口×速水。甘々?」

この一週間、怒涛のような日々でした。
気付けば前回の日記から一週間経っちゃってるし…。
そういえば木曜日、ボジョレーヌーボーの解禁日だったのですよね。
それどころじゃなかったですよ。…もういいや、しょぼん。

最近座りっぱなしで仕事をしているせいか、むくむは緩むは大変です(笑)
肩こりも運動不足のためだというし。
スポーツクラブにでも通った方がいいのかな…と。
ご近所にもあるのですが、丁度会社と反対方向。会社帰りに拠るのは大変だな…と、こんな事ばかり考えているから私は運動不足になるのか。


裏SSも少しずつ書いているのですが、24KB書いても全然終わらない〜;
もう少しお待ちくださいませ、すみませぬ。





【幸せのハンカチ】





パソコンのスイッチを押すと、ヴンッという音と共にモニタにDOS画面が流れ始める。
瀬戸口は一瞬で流れ去るそれを持ち前の動体視力で判読し、この端末が正常に動いていると確認した。
起動まで時間が掛かる。
その間に整備員詰所の傍らにある小さな流しで、埃まみれになった手を丹念に洗う。



詰所の端末を修理するように、と言われたのは今朝の事。

「整備士の誰かがやれば早いんでしょうけれど、生憎だれも手が空いていないの」

髭面の青年司令に頼まれたのなら渋る所だが、美貌の整備主任に頼まれたなら否やはない。
瀬戸口は女性(特に美人)に親切だ。
しかも相手が疲れた顔を無理に微笑ませているならば尚の事。
喜んで、と労わるように笑顔を向けると、原は少しだけ疲労の軽減した顔でにこりと笑った。



ハードの問題だ。と一通りチェックして瀬戸口は困惑した。
自分の手に負えないような内容なら、芝村か茜にでもプログラムを組んでもらって…と考えていたのだが、どうやら宛てが外れたらしい。
瀬戸口の前には、カバーを取り外された端末が無惨な姿を晒している。
何処も品不足だ。パソコンの部品を手に入れるのもなかなか容易ではない。マザーボードを交換したいな…と考えつつ、取りあえず電池だけ交換しておく。
後で裏マーケットへ行こう。士魂号の生体部品すら手に入る店だ。マザーボードの一枚や二枚置いているだろう。
瀬戸口は取り合えずパソコンを元の姿に戻し、机の上に据え付ける。
すぐにテレポートセルで新市街へ跳んだ。
彼は自分の仕事はともかく、原から頼まれたことを疎かにするほど命知らずではなかった。



そんな経緯で修理されたパソコンが、瀬戸口の背後でブワァンと独特の音を立てる。
正しく立ち上がっているのを肩越しに確認して、やれやれと溜息をついた。
指に付いた黒い埃汚れは、油分を含んでいてなかなか落ちない。ウンザリしながらも丁寧に石鹸を泡立てる。
美少年は指先まで綺麗であるように注意しなくてはならない。特に恋人に会う前には。
瀬戸口は時間を掛けて満足行くまで手を洗う。
手のひらに比して指が長く形良く、しかし繊細さより男らしさを感じる力強い手はピアニストのようだった。
しかし、瀬戸口自身は自らの手の形にはさして注意を払っていない様子で、乱雑に手を振って水滴を切る。
ポケットに手を伸ばし、ハンカチを取り出した。
そして、止まった。
パリッと角まで綺麗にアイロンの当たったハンカチ。
瀬戸口は暫し、じっとそれを見つめる。そして、目を天井に向けて一瞬考え込むような顔をしたと思うと、折角のハンカチをとても大事な物のようにまたポケットに仕舞ってしまった。
ぽたぽたと水滴を落としながら、詰所を縦断する。
隅の棚に積んであったタオルを一枚失敬し、大雑把に手を拭いた。
彼のポケットにハンカチが入っている。何の変哲も無い、けれど瀬戸口には特別なハンカチである。
瀬戸口はポケットの上から手を触れて、酷く幸せそうに口許を緩めた。



***



速水は洗濯籠を覗き込んでいた。眉根を寄せ、大きな目を半目にしている。
不審。そういう言葉がピッタリ来る表情。
さして多くも無い洗濯物の中から一枚を取り出し、よくよく観察する。
眉が急角度に吊り上がり、口がへの字になる。
速水はそれを手にしたまま、居間の方へと向かった。

「瀬戸口さん!これ…」
「ん?」

昨夜から速水の部屋の住人となった、自称『速水のスイートラバー』な美少年は、端正な顔を向けている。
速水の険しい表情にも、にっこり笑顔。
「怒った顔も可愛いな」ぐらいに考えていそうな緩んだ笑顔が、余計に速水の怒りを煽る。

「使ってないでしょ。ハンカチ」

僕が折角アイロン掛けしたのに…と速水は口を尖らせた。
瀬戸口の笑顔がますます緩む。
幸せ一杯夢一杯にだらしないほど緩んだ表情は、美少年として許容されるギリギリのラインである。

「…だってあっちゃんが愛を込めてアイロンしてくれたハンカチだからさ。
 あっちゃんが新妻チックにアイロン掛けしてくれてる姿を思い出したら…勿体無くて」
「馬鹿じゃないの…」

速水は呆れ、少し怒った。
瀬戸口は叱られて嬉しそう。
速水はもっと呆れる。

「僕の愛の篭ったハンカチを使わないつもり?」
「大事にとっとくつもり」
「早く使わないと愛が傷んじゃうんだから!」
「愛情に賞味期限はないと思わないか…」
「思わない、腐っちゃう」

速水の可愛げの無い発言に、瀬戸口は至極真面目な顔つきで頷いた。

「腐っちゃうなら早く食べないとな」
「食べ…」
「『愛情は生ものです。お早めにお召し上がりください』って?」

瀬戸口は自分よりふた周りは小柄な少年にのしっと体重をかける。
こんなとき、少年を潰してしまわないように彼が心を砕いている事を、一体幾人の人が知るだろう。
速水が抗議の声をあげ、部屋が一時的に騒がしくなる。
あくまでも一時。その声は段々小さく細くなり…やがて違う声に入れ替わる。
瀬戸口は食べたり喋ったりという本来の目的とは違う用途に忙しく口を使いながら、綺麗に洗った綺麗な手で最愛の恋人を抱き締めた。




Fin
――――――――――――――――――――――――――――


瀬戸口って、煙草の事とかでも速水に叱られるの好きそうですよね。

速水   「身体に悪いんだから、止めてって何度も言ってるでしょう!?
      心配してるの判らないの!」
瀬戸口 「ん…。ごめんごめんv判ってるよw」
速水   「ちっとも判ってないじゃないか(怒)」
瀬戸口 「v」

…マゾ?

という方はスイッチをどうぞ。


…って明日別の方の資格試験だったわ。暇無くて全然勉強してないし!(笑)
今夜徹夜で一夜漬けしよう。
………なんだかこれって、私の生き様を如実に表しているような気がします;


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