+ 空の向こう +
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2005年11月03日(木) ジェシリな感じで。

語ってみる。
どうにも最近脳内はハリポタブームらしい。というのと、某サイト様で素敵なジェシリ絵を見てしまったので。

思わず納得したのは、シリウスはベールの向こうでジェームズに会うことができたんだということ。いや、完全に失念してた。リーマス視点で全てを考えていたことに改めて気づいてみたり。5巻での手を差し伸べることのできなかったシーンとか、その後どうにも落ち込んでいるリーマスを見るとそればかりが切なく感じたのですが、よく考えればシリウスが死んだのであればやはりその向こうで出会ったのはジェームズなのだろうな。
ついこの間、二人を双子と例えてみたけれど、ベールをくぐってしまったことによって引き裂かれた半身と再び見えることができたのだなと。それが望んだことではないにしろ。シリウスは夫婦にどれだけの謝罪の言葉を並べても足りないくらいに詫びて自分の愚かさを再び呪ったとしてもジェームズは許してくれるのだろう。どれだけ馬鹿だあほだ間抜けだと笑ったとしても、きっと最後には全部受け止めて笑ってくれるんだ。「すまない・・・」と、かすれる声で言うシリウスを肩で抱きとめて「お疲れ様」って言ってくれるのだろう。
なんて夢を見てしまう(笑。

今までジェーさんのイメージってぼんやりしていたのですが、これで少し確立できたような気がします。正直ジェームズってイメージがぼんやりしすぎてて、霧の向こう霞の向こうの人だったんでした(オイ。
やはりジェームズは頭がいい人だと思う。いろんなサイト様の影響を受けまくって、いろんなジェームズを見てきた中で自分の中でのジェームズ像がずいぶんできてきました。ちょっと嬉しかったりしてます。
ただ、ジェシリ・・・って考えたときどうしてもリリーの存在を無視できません。この物語でジェリリははずせませんからねぇ。とはいえ、この二人は友達以上恋人以上(ェ?)なものを感じるので、双子と定義してみたりしてるわけです。


突発SS。

シリウスは何も考えられなかった。
ただ、何かの衝撃とともにふわりとしたベールを越えたのだけはわかった。朦朧とした意識が次第に鮮明になっていくにつれて、同時に己が置かれている立場も理解し始める。この真っ白な世界がベールの向こう――自らが来た世界とはまったく異なるものだということを理解する。
それは突然の別れ。
ベールの向こうで泣き叫ぶ名付け子と目もそらせずにいる恋人の姿を見て、血の気の引くのを感じた。
14年前の悲しみと同じものを愛するものたちに味あわせてしまった。
それに気づいたとたん、シリウスは己の行動の浅はかさを実感した。ディメンターにキスを迫られたとき以上の絶望を感じた。
戻りたい。あのベールの向こうへ。
これは嘘だと言って彼らの元へ戻りたい。
だがどんなに駆け寄っても、薄い皮膜の向こうに行くことはできなかった。
「ハリー!リーマス!!」
気づいてくれ。ここにいる。
膜のような壁に拳を叩きつけそう叫ぶが、声は虚しく消え、向こうの世界には届かない。まるで映画を見てるかのように、ベールの向こうは自分とまったくかけ離れた世界としてシリウスを無視して流れていく。
後は崩れ落ちるしかなかった。力なく膝をつき、遠のいていく仲間たちを呆然と見ていた。
涙があふれた。
幾年ぶりの涙だろうか。忘れたとばかり思っていた温かな雫に動揺し、それが一層の涙を誘った。
「あーあ、何泣いてるのさ。」
突然声がしてシリウスは声のほうへと振り返った。
もうずいぶんと長いこと聞くことのなかった声だった。あれほどもう一度聞きたいと願った声だった。
だが、今のシリウスにはただの絶望でしかなかった。
「ジェームズ・・・・・・。」
シリウスの背後にはどこから現れたとも知れないジェームズが立っていた。昔のように飄々としていて、けれどどこか親しげに。肩眉をしかめながら笑っていた。
こぼれる涙は終に止むすべを失った。
「俺は、まだお前の傍に行くわけにはいかないんだ。」
シリウスはジェームズの脚にすがり付いて叫んだ。
「でも現に君はここにいる。」
落ち着き払った声でジェームズは答えた。
「俺はまだヴォルデモートに復讐すらできていない。
 俺はまだダンブルドアに恩返しも終わっていない。
 俺はまだリーマスとの約束も守ってない。

 俺はまだ・・・お前との約束も守れていない・・・・・・。」
「そっか・・・。」
泣き崩れるシリウスにジェームズは先ほどと変わらぬ調子でそう短く告げた。
シリウスは喉が裂けんばかりに謝罪し始めた。
「すまない。何一つとしてお前との約束が守れなかった。お前が俺をハリーの名付け親にしてくれたというのに、お前が俺にハリーを守る役目を与えてくれたというのに、お前は俺を誰よりも頼ってくれたというのに俺は・・・俺はお前に何一つ報いることができなかった。あの日、誓ったのに、誰よりもハリーを守ると誓ったのに、こんな・・・こんなむざむざ殺されるまね・・・。すまない。本当にすまない。」
それからもただひたすらにシリウスは謝り続けた。自分の愚かさを罵り、無力さを呪い、彼の謝罪の言葉はジェームズに自分を責めてくれと語っていた。
だがジェームズは彼が言葉を吐き捨てる間何一つ喋りはしなかった。ただじっと聞いているだけだった。シリウスの訴えが分かっていたからこそ、何も言わなかった。
いっそ責めてくれほうが楽だったろう。だが、ジェームズはそれをしなかった。
シリウスは拳を何度も地面に叩きつけた。赤く、血が滲むまで何度も何度も。言葉だけでは足りず、身体的にも自分を傷つけ始めた。それだけ許せなかった。
ジェームズは黒い言葉を自分に浴びせ、何度も何度も謝罪するシリウスをじっと見ていた。
「・・・・・・俺は・・・・・・、」
その言葉を聴くのは何度目になっただろうか。その時ジェームズは片膝をつき、シリウスと目線を近くした。
「ねぇ、シリウス。僕は君を責めてはあげないよ。何度君が君自身をけなそうとも、僕は君をけなしてはあげないから。」
シリウスははっと顔を挙げた。言葉にこそしなかったが、それでも瞳は何故と訴えた。
シリウスの闇よりも濃い瞳は赤く腫れていた。端正な顔には幾筋もの涙の後があり、せっかくの男前も台無しだった。
そんなシリウスの頭をジェームズはそっと抱え込んだ。ぴたりとジェームズの肩口にシリウスの額が当たる。突然のことにシリウスは困惑した。
「・・・ジェームズ?」
「ありがとう」
「・・・何を・・・」
聞き返したかったが、それ以上言葉を紡ぐことはできなかった。優しく、そして強く抱き寄せ、ジェームズはしっかりと抱きしめた。
優しく抱きこまれ、驚きでとまったはずの涙が枯れることなく溢れ出した。そして容赦なくジェームズの服をぬらす。
泣いて、泣いて、自分をけなすことを忘れるほど泣いた。
シリウスがジェームズに何を望もうとも、抱き寄せた腕が彼の答えだった。
「・・・すまない。」
嗚咽にまぎれてシリウスが最後にもう一度そう呟いた。
そこには誰をも責める響きのない、彼の素直な謝罪だった。
「うん。」
ジェームズは初めてうなずいた。


「お疲れ様」



そして二三度、シリウスの背中をあやすように叩いてやった。


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