 |
 |
■■■
■■
■ 私小説
私小説「血」
いつの頃からか、血を見ることで安心していた。確かに“安心”と言う言葉にあてはまるかどうかはわからない。ただ、人間として産まれてきた以上、人間社会のカテゴリーで生きている、そんな枠を少なからずとも一瞬、はずしてくれるような気がするのは間違いない。 私は人間だ。 私は人間なのだ。 人間として、黄色人種として、日本人として、この地球で、このアジアで、この日本で暮らしている。学校に言ってた十何年かと少しずつ始まりつつある社会生活と。 間違い無い。 揺るぎ無い。 どこかで窮屈を感じる? 例えば、今、妊娠して子供でも腹の中に宿して、のち、産み出したら、きっとまたとない開放感が得られるんじゃないだろうか。 でも、やっぱり枠の中で生きている。 枠の中で行きようとしている。 少しずつでも、精一杯を演じようとしている。 他人の血は、いくら見ていてもリアルじゃない。 求めているのは、自分のリアル。 どんなに血がそこらに溜まっていようと、そのまんま、他人としての視線を落とす。感情移入の隙を見出すことが出来ない。 何かが欠けている。 欠落している。 破綻している。 私は、一種の不具者に過ぎない。
2001年12月25日(火)
|
|
 |