スナックおのれ
毛。



 私小説

私小説「血」

いつの頃からか、血を見ることで安心していた。確かに“安心”と言う言葉にあてはまるかどうかはわからない。ただ、人間として産まれてきた以上、人間社会のカテゴリーで生きている、そんな枠を少なからずとも一瞬、はずしてくれるような気がするのは間違いない。
私は人間だ。
私は人間なのだ。
人間として、黄色人種として、日本人として、この地球で、このアジアで、この日本で暮らしている。学校に言ってた十何年かと少しずつ始まりつつある社会生活と。
間違い無い。
揺るぎ無い。
どこかで窮屈を感じる?
例えば、今、妊娠して子供でも腹の中に宿して、のち、産み出したら、きっとまたとない開放感が得られるんじゃないだろうか。
でも、やっぱり枠の中で生きている。
枠の中で行きようとしている。
少しずつでも、精一杯を演じようとしている。
他人の血は、いくら見ていてもリアルじゃない。
求めているのは、自分のリアル。
どんなに血がそこらに溜まっていようと、そのまんま、他人としての視線を落とす。感情移入の隙を見出すことが出来ない。
何かが欠けている。
欠落している。
破綻している。
私は、一種の不具者に過ぎない。


2001年12月25日(火)
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