無理矢理日記

2002年12月10日(火) お客様の中に。

「失礼いたします。お客様の中にお医者様おられますでしょうか?お医者様おられましたら・・・」
「・・・私は医者だ」
「あっ、お医者様、申し訳ありませんが、こちらへ来て手を貸していただけませんか?」
「うむ」


「患者の容態は?」
「いえ、それが私どもにはさっぱり・・・とても苦しそうにはされておられるのですが」
「ふむ、それもそうだな、私が診よう」

「どうですか先生?」
「これはいかん!空港につくのを待っていたのでは手遅れになる」
「えっ、そんなにひどいだなんて」
「ここで手術するしかないな。危険ではあるが、やらなければ間違いなく・・・」
「そんな・・・」
「すまないが君、切開手術をするしかない。くっ・・・運の悪いことにこの患者はRHマイナスのAB型だ。何とか用意してくれないか?」


「たびたび申し訳ありません、お客様の中にRHマイナスのAB型の血液をお持ちのお客様おられますか?」
「・・・はい。私その血液型だと」
「すみませんがこちらへ」


「先生!RHマイナスABの方がいらっしゃいました」
「おお。いるとは。しかし、新たな問題が発生したよ・・・」
「えっ?」
「メスがない」
「あっ!税関で・・・」
「私は腕には自信がある。メスでなくとも、何か切れるもの、刃物があれば・・・」


「申し訳ありませんが、お客様の中で、刃物をお持ちのお客様!刃物をお持ちのお客様おられませんでしょうか!」
「おう」
「あ、お客様。すいませんがこちらへ。(どうやって持ち込んだのかしら)」


「先生、この方がバタフライナイフを持っていると」
「でかした!・・・しかしそれはそうと君、この患者の制服だが、この人はもしかして」
「はい、当機の機長でございます」


「すいませんが、お客様の中に機長の方はおられませんでしょうか?」
「私だ」


「先生、どうですか?」
「うむ、このバタフライナイフは相当血を吸っているな、切れ味が・・・」


「すいませんが、お客様の中に研ぎ師の方おられませんでしょうか?」


「先生?」
「さすがに揺れがひどい。集中が難しいな」


「すいませんが、お客様の中に覚せい剤をお持ちのお客様おられませんでしょうか?」


「どうですか?」
「順調らり。もうちょっとらり。チュッパチャプス舐めたいらり」


「すいませんが、ボク、このチュッパチャプスよこしなさい」


「どうでしょう先生」
「うまいらり、ところでサンタってホントにいるのかなあらり、ちゅぱちゅぱ」


「お客様の中にサンタクロースの方・・・」


「先生、どうですか」
「だめらり、手遅れのようらり、最善は尽くしたらり、ちゅぱちゅぱ。やあ、サンタさんはホントにいたんだ!」
「そんな・・・」
「うう・・・苦しい」
「機長!しっかり!」
「君か・・・、君は良くやってくれたよ。ありがとう。わしはもう・・・」
「そんな弱気なことを機長!」
「いや、自分でわかるよ。わしはもうダメだ」
「機長・・・」
「ただ・・・ただ最期に一目・・・」


「お客様の中に10年前お父様と生き別れになられたカズユキ様おられますでしょうか?」


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